満月衛星。-ss-クリスマスにアンメルツを 満月衛星。 ss - クリスマスにアンメルツを

『クリスマスにアンメルツを』

『ジングルベール ジングルベール 鈴が鳴るーーーーーっ!』

 クリスマスの赤鼻は、春原の部屋の隣からけたたましく響いてくる。
 ラグビー部の納会も、何もよりにもよって春原の隣の部屋でするこたぁねぇだろうが。
 うるせぇったらありゃしねぇ

「うるせぇことこの上ないな」
「いっそこっちもボンバヘッで盛り上がろうぜっ!」
「やめろ、余計に気が萎える」
「そう? クリスマスにボンバヘッなんてサイコーじゃん」

 どこがだ、とだけ答えてコタツに突っ込んでいた手を出してみかんを一つ取る。
 すじを取るのがメンドクサイ。皮だけザックリ向いて、そのまま適当に口に入れる。
 正月にはまだ早いが、クリスマスだろーが正月だろーが、人間いつでもやることは似たようなもんだ。

「あ〜、冬だ……」
「12月は冬だからねぇ。12月が夏になるわけないもんねぇ」
「南半球は夏真っ盛りだがな」
「ここは日本です」
「俺の奢りでオーストラリアにでもいこうぜ?」
「マジで奢ってくれるんすかっ!?」
「ああ、奢る奢る。ただし支払いはおまえな」
「オーケーオーケー、それくらい僕に任せてくれよ。……って、結局それってボクの驕りってことじゃないんですかねぇっ!?」
「ちっ、気付いたか」
「いくらなんでも気付くよっ!」
「つまんね」

 今までのことはなかったことのように呟く。

「あ〜、それにしても、さみぃ……」
「確かに寒いねぇ」
「何でこんな時期におまえの部屋で俺たちはコタツにこもってんだ?」
「することがないからですねぇ」
「あ〜、暇だ……」
「暇だねぇ」
「おい春原」
「あん?」
「なんか面白いことやれ」
「急に言われてできるわけないでしょっ!」
「いいじゃん、隣の部屋にでも駆け込んでラグビー部員の顔にパイでもぶつけてこいよ」
「僕のおっぱいぶつけてどーすんのさっ!」

 ……誰がおまえのおっぱいぶつけろと言った。いや、でもそれはそれで面白そうだな。
 春原の勘違いはほったらかしといて、それじゃあなんかねぇもんかと考えをめぐらす。

「わかった、それじゃあじゃんけんをしよう。負けた春原がジェルでアソコの毛を全部逆立てるのな。いくぞー、じゃんけん」
「えっ、あ、ちょい待ち、負けた岡崎はっ?」
「ポンッ」

 俺、パー。春原、グー。

「よし、今回は一発で勝った。じゃあ、脱げ」
「ええっ!? マジでやるんすかっ!?」
「マジでやらないでどーすんだよ?」
「いや、ちょ、ちょっと、勘弁してくださよねぇっ、第一そもそも僕の部屋に整髪料なんて置いてないよっ」
「ちっ、つまんねぇな」

 それだけ呟いて、思い出した。そっちがダメならあっちがあるじゃん。
 むしろあっちの方が面白そうだ。早速行動に移すとしよう。

「じゃああれ出せ、アンメルツ」
「まぁアンメルツはあるけど、なんに使うのさ?」

 がさごそと部屋の中をあさってアンメルツを持ってきた春原。不思議そうな顔をしてる。
 何に使うかって、そりゃ使い道は一つしかない。

「あん? なに言ってんだ、決まってんだろ、ぬるんだよ」
「だれに?」
「おまえに」
「そんなものぬる必要ないよ」
「チンコにジェルで逆立ては勘弁してやったんだ。代わりにこいつをぬれ、チンコに」
「ぬるとなんかあるの?」

 ものっ凄く不安そうな顔で聞いてくるので、さすがに哀れになってきた。そんな春原を安心させるために、俺は言ってやった。

「すげぇ気持ちよくなる」
「マジすか?」
「おお、マジだ。中坊のころ俺もよくやった」
「ホントにっ!? それ今まで僕知らなかったよ。早速やってみるね」
「ああ、わかった。わかったから向こうでやってくれ。おまえのモノなんぞ見たら目が腐る」
「あんたにも付いてますからねぇっ! まぁいいや、それじゃあさっそく気持ちよくなってくるよ。あとで岡崎にも貸してやるよ」
「おまえがつかった物なんか使いたくねぇからいらねぇ」
「ふふん、あとで気持ちよくなりたいって言っても貸してやらないからね」
「ああ、結構だ」

 アンメルツを持って余裕な顔をして風呂場に向かう春原。ちなみに気持ちよくなるってのは真っ赤な嘘だ。
 実際は……

「ギャーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!! チンコが熱いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 と、言う風になる。すぐさま春原が風呂に入る音と、シャワーの音が聞こえた。熱い熱い言ってるざまがまたなんともいえない笑いを呼ぶ。
 実際のところ、気持ち良くなるってのは真っ赤なウソだが、俺も過去にやられたことがある。これは本当だ。
 中坊のころ、修学旅行先で大貧民で負けたときに、やられた。あの時、俺はマジで泣いたもんだった。おまけに熱いのが一晩続いて、眠れなかったもんだった。
 うんうん、今にして思えば、甘酸っぱい青春だった。
 さて、春原も風呂に入っちまったことだし。そろそろお暇するか。

 学生寮から出ると厳しい北風が吹き荒れていた。
 雪が降らなくてよかった。あんなもん降られた日にゃ寒いのが余計に重なる。
 ブルブルッ、と体を震わせて身を小さくしながら帰宅した。
 クリスマスだってのに、何やってんだか……

 はぁ……。ま、いっか。
 人間生きてりゃこんなことして過ごすクリスマスだってあるさ。

「ジングルベール ジングルベール 鈴が鳴るー」








おわり







---あとがき---
 (//)

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