満月衛星。-ss-ポジティブ・メイカー 後編 満月衛星。 ss - ポジティブ・メイカー 後編

『ポジティブ・メイカー 後編』

 しばらくしてようやっと二人とも落ち着くと、今度は風子の方から疑問が飛んできた。

「岡崎さんはさっきはなんでボーっとしていたのでしょう?」
「何でってそりゃ、色々考えてたからだわな」
「その色々が気になります。初めはアホな顔をしていた岡崎さんが、徐々に何かを怖がっているような表情になっていきました。
 風子は岡崎さんにいつも笑っていてもらいたいと思います。だから風子は、岡崎さんに悪戯をして、その気持ちを忘れてもらいたいと思いました」

 ……驚いた。悪いとは思ったが、驚いた。風子がここまで俺を見てくれていたなんて。
 ンでもって、それと同じくらいに、嬉しかった。だから俺も素直に教えるべきなんだろうなと思った。俺を襲った、この不安を。

「ちょっとな、怖くなったんだよ」
「岡崎さんでも怖いものがあるんですか?」
「そりゃあるよ、って言うか、最近できたって言う方が正解だな」
「それは驚きです。で、それは一体なんでしょう。明智さんもビックリの推理力とご近所でも有名な風子が、バシッと怖いものを解消して差し上げます」

 その推理力には不安を覚えなくも無いが、でも、それは別にして風子には、言っておきたかった。
 俺たちがなんで惹かれあったのかが解らなくて、不安になってしまったということを。
 風子にしては珍しいくらいに落ち着いて人の話を聴いていた。そして、聴き終わるとゆっくりと口を開いた。

「それは……風子たちが覚えていたからですよ、きっと。」
「覚えていた?」
「そうです。風子が眠っている間に、きっと何かがあったんです。」
「なにかってなんだよ?」

 べたな質問だったが、今の風子の台詞はあまりにも抽象的過ぎて、よく解らなかった。

「風子にもわかりません。ですが、きっと覚えているんです。お互いの名前を忘れても、記憶がなくなってしまっても、お互いの、気持ちを……」
「どこが俺たちを覚えさせていたんだろうな?」
「そうですね……魂が覚えていた。といったら、ちょっと凄いことだと思いませんか?」
「そうだな」

 たった一言と、風子が向けた笑顔で、俺はその不安から開放された気がした。……ありがとな。
 俺は自然と風子の頭に、ひょいと手を置いて撫でようとしていた。が、

 ばっ、

 ……なぜか払われた。小癪な。
 俺はもう一回頭に乗せようと、ひょいと手を風子の頭に乗せる。

 ばっ、ひょい、ばっ、ひょい、ばっ、ひょい、ばっ……

「わぁーっ」

 どんっ、
 そういって俺に体当たりをかまし、そのまま公園お隅まで走っていってしまった。
 ……なんだろう、酷くショックにゃショックだったが、それ以上に、どこか懐かしいと思ってしまった。

「ふーっ……!」

 おまけに威嚇までしてるし。っていうか、これも不思議と懐かしい。初めてのはずなのに。

「風子ー、おいでおいで、もうしないから」

 優しくて招きをして、子供をあやすような口調で敵意の無いことを示す。いや、別にさっきのにも敵意はなかったんだけどな。
 ……対抗心はあったような気はするが。
 とりえず、風子のご機嫌をとるために、やつが喜びそうなもので釣ってみることにする。

「風子、もっかいブランコ乗るか?」
「んーっ、乗ってあげますっ!」

 あっさり釣れた。ふっ、甘いぜ。操りやすい彼女で助かった。



 ……甘かったのは俺の方だった……

「ほんわぁ〜」
「…………」
「ほわわわわぁ〜」
「…………」

 また、逝ってしまわれた……。しかもまた俺の膝の上だし。……参った。はぁ……学習能力ねぇな、俺。
 と、そこに救いの女神が現れた。

「岡崎さん?それにふぅちゃんもです」
「古河!?」
「どうしたんですか?」
「いや、どうしたこうしたは後で話すから。とりあえず今は……これで早苗さんのパンを一つ買ってきてくれっ」

 ガザゴソとポケットをあさり財布を取り出し、小銭を古河に渡す。
 俺のしようとしている事が理解できていないらしい古河は、たいそうビックリした様子で

「岡崎さん、本気ですかっ!?」

 と言った。……それ、早苗さんが聴いたら泣くからな。

「本気も本気。いいから早くかってきてくれ」
「ど、どうなっても知りませんよ?」
「わかったから、早めに頼むわ」
「……解りました」

 どうせ喰うのは俺じゃない。「ほんとに、どうなっても知りませんからね」と目で訴えながら古河は家へと戻っていった。
 どうやら本日の早苗さんのパンは相当にデンジャーらしい。……実に楽しみだ。



 ……それから、早苗さんのパンを持って戻ってきた古河に礼を言い、早速早苗さんのパンを千切って風子の口の中に突っ込んでみた。
 予想以上にステキな悲鳴と、ステキなリアクションを見て大満足した俺だったが、そんな俺を見て、また風子が不機嫌になった。
 そんでもってまた、俺がご機嫌を取る羽目になってしまったというのは、別の話だ。









おわり














---あとがき---
 かけないと思っていた風子で、SSができてしまいました。ビックリですっ
 ネタは無くも無かったんですけどねぇ。うまいこと話にならんかったんですわ。
 んなわけで、今回無事(?)に話(?)になってくれて、おまけに私が風子でやりたかったこともできて、私的には満足しております。

 ギャグになったりシリアスになったりまたギャグになったりと、忙しいSSですが、楽しんでいただければ光栄です。
 でも風子って、風子シナリオだと何気に大人っぽいところあると思いませんか?
 そんなことを感じながら作ったSSでもあります。

 全く関係の無い話ですが、今回のSSのタイトルで使わせてもらったのはGuilty Crowというバンドさんの曲だったのですが、この曲、私の中で風子のテーマソングだったりします。
 「名前さえ忘れても 君を忘れはしないから」とか
 「家族 親友 愛する恋人の 思いに応えてふんばろう」とか
 「言葉さえ失くしても 大事な気持ちを伝えたい」とか
 「楽あれば苦もあるlife 負ケズ逃ゲズに居られたのなら 夢はすぐそこに...」という歌詞、風子シナリオっぽくないですか?
 賛同していただける方が居れば、光栄に思う所存です。

 まぁまぁ、兎にも角にもここまで読んでくださった皆様に、沢山の感謝を込めつつ、今回はこの辺で。
 ではまた〜
 (05/04/19)

 感想なんかをメールBBSにいただけると、嬉しく思いますよ。
 是非とも、おひとつ……

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