満月衛星。
ss
- 桜花、繚乱。
『桜花、繚乱。』
区画整理されてアスファルト道になった地元の中学校までの道のりを、俺と汐は二人で桜のまい散る中、歩いていた。
道の脇を彩る桜の花は、毎年こうやって新しい中学生達を迎えているのだろう。今年も立派に咲いていた。
俺達も、回りにいる今年中学校に入学する子達もその親も、その見事な咲き具合の桜に歓迎されていた。
「パパー、はやくはやくーっ」
「そんなに慌てなくても時間や十分に間に合うし、学校も逃げないから、お前の方がちょっとは落ち着けな」
「ぶーっ、だって早く行きたいんだもんっ」
はしゃぎブー垂れる汐をなだめながら、母親の面影が残る汐に、渚を少しだけ重ねる。
ここに渚も入れば二人一緒になってはしゃいだんじゃないだろうか……なんて思いながら。
結局、一人になろうとしていた俺は、一人になった振りをして、慣れたと思い込んで、一人で強がっていただけだった。
汐と家族になることができて、その上で冷静に自分を振り返って、そのことに始めて気が付いた。
アスファルトの黒の中で舞う桜の花びらたちは、まるで夜空を彩る星達のようで、そこはさながら小さな宇宙に見えた。
そんな中を、汐はクルクルと回って、そんなに長くもない髪をなびかせていた。その姿に、俺は目を奪われる。
「えへへー、パパ、今私に見惚れてたでしょ?」
そんな俺の様子に気がついてか、汐が悪戯っぽく笑って上目遣いで俺を見上げた。
流石は女の子、こういう所は恐ろしく見ている。こりゃ下手な嘘はつけないな、そう思って俺は素直に降参する。
「正直、ちょっとな」
「ちょっと?」
「ああ、ちょっとだ。後、ちょっとママを重ねてた、すまん。」
「いいよ、気にしなくて。あ、でも、気にしてくれるんだったら、今夜の晩ご飯はステーキとパフェが好いなぁ〜」
「ちゃっかりしてる。よし、それじゃあ今夜はファミレスで晩飯にするか」
「やたっ」
苦笑いをしながら了承する俺に、汐はパチンッ☆と指を鳴らして喜ぶ。ま、たまには外食ってのもいいだろ。
「でも、その前に」
「うん、ちゃんと入学式に出て、ガッコが終わったら古河のおうち、だよね?」
「そゆことだ。二人にはちゃんと汐が中学校に入学したことを報告をしないとな。さて、着いたぞ。」
気が付けばあっという間に学校の前に着いていた。時間の経ち方ってのも、きっとこういう風に何気ない時間があっという間に過ぎていくものなんだろう。
ここから生徒は校舎入り口でクラス表を渡されるらしい。俺達親は、体育館でしばし待機だそうな。
「それじゃあ、行って来ます」
「ああ、頑張ってな……って言うのは少しおかしいか?」
「そうね。なにを頑張ればいいのかも良く分からないしね。まぁとりあえず、いいクラスになることを祈っててよ」
「分かった、そうしよう。じゃ、また後でな」
「あとでねぇ〜」
こっちを向きながら、手を振って駆けて行く汐。おいおい、前を向いて走らないと危ないぞ。
……ってあ、早速ぶつかってる。言わんこっちゃない。
汐はぶつかった生徒にひたすら謝り倒し、その生徒が去って行くと、今度はこっちを向いてバツが悪そうに頭をポリポリと掻いて、えへへー、と笑った。
前を向いて走りなさい、娘よ。人様に迷惑を掛けてようやっと落ち着いたらしい汐は、今度はちゃんと落ち着いて、人込みの中へと入って入った。
汐を見送った俺は、体育館前で入学式のタイムテーブルを確認して、生徒入場までの時間を外で潰すことにした。
何せ回りに知り合いなんざ居ないから中で時間が潰せない。本も持ってきてねぇし、そもそも読まねぇし。
そんなわけでいったん校門から外に出る。
桃色の衣を羽織った木々と、アスファルトの宇宙を彩る桃色の星達が風に揺らめいて瞬いていた。俺と渚が出会ったのも、こんな季節だった。
それからの思い出が、まだ昨日のことのように思い出せる。汐をお腹に宿して、その後にめぐってきた、悲しい予感と現実までもを、まだココロが、カラダが、覚えてる。
確かに渚は俺のそばを離れてしまった。
けど、今、俺のそばには汐が居てくれている。
渚が居なくなった悲しみを超えることができたから、今度は俺と、汐が幸せになれるようにまた俺は走りだすよ。
渚……俺達のこと、ちゃんと見守っててくれな。
きっと、俺はまたこの桜が咲くたびに、お前の姿を思い出すだろう。
あのころ俺達で創った、抱え切れないくらいのつらいこと、悲しいこと、嬉しいこと、楽しいことを思い出しながら……
おわり
---あとがき---
突発的に創って観ました。突発的に作っただけあってあちらこちらが穴だらけですが、それはそれでありだと思ってます。
話の方向としては、雰囲気物目指して書いて見ましたが、如何なものですよ?
雰囲気物ってのがいまいち良く分かりませんが、兎にも角にも雰囲気重視で。なんとなく、雰囲気を感じていただければ、これ幸いです。
ROUAGEの「桜花、繚乱。」オマージュしすぎ。って言うかパクリ過ぎ。いやでもこの曲、好きなんですよ。すげぇ好きなんですよ。マジで好きなんですよ。
曲といい、歌詞といい、アレンジといい、全部が全部、好きなんですよ。まぁ、興味が湧いたら、ブックオフ辺りで捜して見てくださいよ。
100円で捜せばあるかも。『月のながめかた』ってシングルのカップリングに入ってます。ちなみに、ROUAGEって書いてルアージュって読みますよ。
まぁまぁ、兎にも角にもここまで読んでくださった方々にも、本編のみを読んでくださった方々にも、沢山の感謝を込めつつ、今回はこの辺で。
ではまた〜
(05/04/28)
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