満月衛星。-ss-朋也くんとメイドさん達〜扉の向こうはユートピア?編〜 満月衛星。 ss - 朋也くんとメイドさん達〜扉の向こうはユートピア?編〜

 今日も放課後が来てしまった……。しょーじき、逃げたい。でも逃げたら次の日が怖い、色々。
 杏の辞書とか、涙目のことみと「よくもことみを泣かせたわねーっ!」といって暴れだす杏とか、藤林の「呪い」と書いて「占い」と読むとか。

「岡崎君、なんか呼びましたか?」
「呼んでない、呼んでない、呼んでない」
「そうですか、それじゃあ先に行ってますから、もう少ししたら来て下さいね」

 そういって去っていく藤林を笑顔で手を振って送り出す。中途半端に人の心読むな。
 教室内ではちゃんと岡崎君と呼んでくれているので、その辺の分別が皆ついてるのは正直ありがたかった。
 間違っても教室内でご主人様呼ばわりはされたくない。そんなもんされた日にゃ次の日から登校拒否&引きこもり決定じゃん。


『朋也くんとメイドさん達〜扉の向こうはユートピア?編〜』


 ところで、藤林のあのトランプをぶちまけるのは、ぶちまけたふりをして実は結界か呪いの六芒星のようなものを展開してるんじゃないかと思ってるんだが、どうだろう?
 そんなことを考えながら演劇部室に向かう。……演劇部室、ねぇ。正式な演劇部員は古河のみで、活動威容はメイド服着て永遠と喋ってるだけの部だぞ。部か?
 いやまぁ深く突っ込むとこっちの寿命が縮みかねんから深くは言わないけどさ。あいつらホントに受験生かね?

「朋也くんも受験生なの」
「いや、俺就職組みだし……っていきなりの登場だなオイ」
「出会いはいつも突然なの」
「おまけにわけわかんねぇよ」
「なんでやねん」
「タイミングはばっちりだが、そりゃ俺の台詞だ」
「そりゃまた、しっつれーしましたっ」

 テケテンテンテンテン……とか言うGBMをバックにしょって――勿論、そんなBGMは流れてないから気分だ――そのままことみは行ってしまった。
 結局何がしたかったんだことみよ。
 なにがなにやらサッパリでボケェ〜ッとしてたら向こうからことみが戻ってきた。今度はなんだなんだ?

「キミキミ、ここは追いかけて突っ込んでくれなきゃダメでんがなー」
「……ああっ、そーゆーことを期待してたのな。わりぃわりぃ、素で置いていかれちまった。ハイハイ、それじゃあお望みどおり、なんでやねん」
「遅すぎでんがなー」
「どーもすんません」

 よーやっとわけのわからん夫婦漫才がひと段落つく。なにやら何時も通りにことみ時空に引きずり込まれちまったが、まぁ気にするな、俺。
 いつかコイツの術中にはまらないヤツを見てみたい気がするんだが、そんな逸材俺の周りにいたっけかな。
 マジマジとことみを見ながら考えてたら、視線に気付いたことみが「どうかしたの?」とかいう視線を俺に注いできた。

「いやな、友達、もっと沢山できたらいいな、と思ってな」
「うん、皆でメイドさんごっこやったらもっと楽しそうなの」
「それは勘弁しろ」
「朋也くん、ご主人様いや?」
「あ、いや、その……」
「いや?」

 その目を潤ませて上目遣いで寂しそうに言うのは勘弁してくれ。
 ノーと言わなきゃいけないものまでイエスと答えなきゃならない気分になってくる。
 とりあえず誤魔化さかくてはっ! しどろもどろになりつつ歩くスピードを速め演劇部室へと急ぐ。
 運良く部室は直ぐそこで、あっという間に辿り着く。よし、これで話が誤魔化せる。中で話し声が聴こえるっつーことは、もう他の連中は来てるんだろう。

「ほら、部室に着いたぞ。さっさと入ろうぜ」
「うん、でも朋也くんはちょっと待った方がいいと思うの」

「え、何で?」とか言いつつ、ガラガラガラガラーッとことみの話をちゃんと聴かずに戸をあけたのが不味かった。
「皆がお着替え中なの」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 おっおーぅ。
 そこにあったのはユートピアでした。
 ええ〜っと、あのぉ〜、そのぉ〜……なんだ? どーしよう?

「ちょっとあんた何時まで覗いてるつもりよっ!」

 ドコッ、とか言う音が聞こえた瞬間、俺の視界がブラックアウトした。そうだ、とりあえず部屋から出なきゃだよね。
 おにーさんすっかり頭が真っ白になってたよ。これがホントの「ユートピア殺人事件」、なんちって。

「それを言うならポートピア殺人事件なの」

 だいぶ突込みがよくなってきたな、ことみ……でも、人の……心を……読む……な……ガクッ。





 意識が朦朧とする……。
 アレ? 俺なんで頭朦朧としてるんだっけ? ああ、そうだ、杏に思いっきり辞書ぶつけられたんだっけか。
 そういえばなんで俺、杏の辞書喰らう羽目になったんだっけか……ああ、そうだそうだ。3人の着替え覗いちゃったんだっけか……。

 何気に藤林って胸デカかったよな……。
 それに比べると古河って可愛い胸してたな……
 二人とも制服の上脱いでたおかげでバッチリ下着姿を拝んでしまったよ……
 杏は着替え終わってたけどストッキング履いてる最中だったな……
 足、きれいだったなぁ〜……
 ああ〜、こうなるとことみの着替えも覗けなかったのが残念だったなぁ〜。ってなんで俺こんな邪な事ばっか考えてんだ?
 まぁいっか、なに考えてんのか自分でも良くわかんねぇし……

 取り留めのない事を無駄に思いつつ、思ったそばから忘れつつ、いい感じに頭の高さがあるって言うことは枕かなんか下に敷かれてるんだろうなぁ〜とか考えて、そのまま体を横にした。
 それにしても、枕にしちゃ随分と無機質な感じがないな。なんていうか……枕にはない柔らかさがある。なんだこれ? 枕に手を回してみる。

「ひゃんっ!?」

 ん〜? 「ひゃんっ?」随分と人みたいな音を出す枕だな……おまけになんか柔らかいし。
 とりあえず枕に回した手をまさぐってみる。「んっ……」とか言う甘ったるい声が聞こえる。……なんで?
 そこまで来てようやっと妙な違和感を覚えた俺は、薄らぼんやりと目を開けてみた。
 ……視界一面が真っ白。なんか布みたいな模様が辛うじて確認できた。

「あの……岡崎くん?」

 真上から聞こえた声に「あん?」と中途半端な返事をしつつ声のした方に顔を向けると、そこには真っ赤な顔をした藤林がいた。

「そろそろ足が痺れてきたから、起きたならできれば退いて欲しいんですけど……」
「…………」
「…………」

 見つめあうこと数秒。お互いにフリーズして何もいえなくなってしまった。
 なんだ、なんだ、わけがわかんねぇぞ。ん? ん? ん? ん? ちょっと待てちょっと待てちょっと待てちょっと待て俺。
 俺の頭がここにあって、藤林の頭が上にある。ってことは何か。俺は藤林に膝枕の上で寝て、いや違う違う、伸びてたのか?
 テンパッた頭でようやっとそれだけを確認した俺は、とりあえず正座をして俺の頭を乗っけてくれていた藤林のそばから離れ、無言で立ち上がる。
 パンパンとケツに付いたかもしれない埃を落とし

「……すまん」

 とだけ謝った。っていうかそれ以外に何も言えねぇし。

「いえ、それよりも、その……大丈夫、顔」
「それは、今の所、大丈夫、だと、思う、ぞ?」

 羞恥心が働きまくってそれどころではない。おまけに考えてみれば膝枕させて寝ぼけてたとは言え、俺どっか触っちまったみたいだし。
 ど、何処触ってたんだ、俺? すげぇ気になったが頭の先からつま先まで真っ赤になってる藤林を観ると聴ける雰囲気じゃあない。
 その上空気は気まずい気まずい。何か話題を変えなくては……

「そ、そういえば他の連中は?」

 相変わらず真っ赤の顔を下に向けて、俺の後ろを指した。
 恐る恐る、藤林が指差した方に顔を向けると……居たよ。

 ……なんていうの? 汚物を見るような目で俺を見てるヤツが一人。
 思いっきりぶんむくれて手も付けられそうにねぇヤツが一人。
 そいつを必死こいて宥めると言う貧乏くじを引いたヤツが一人。

「あんたさぁ……いくらご主人様だからってやって良いことと悪いことってあると思うわよ」
「朋也くんとってもとっても最低なの」
「ことみちゃんことみちゃん、ご主人様は気絶してて頭がボーっとしてたんですよ。だから許してあげましょうよ」
「でも、でも……」
「まぁアレよ、今日のご主人様のお仕事は残り3人の膝枕を味わうことね」
「待て待て待て待て、それは頼む、ちょっと勘弁してくれ」
「なんでよ。こんな可愛いメイド達に膝枕してもらえるチャンスなんてそうそうないわよ」

 だからだ。そんなことされようもんなら俺の心臓がヤバイ。心拍数が上がりすぎて死んじまう。

「第一、覗きをかました犯罪者に拒否権があると思う?」

 そういってニヤリと笑う杏は、たたずまいを正して自分の膝をポンポンと叩く。
 ……笑顔が怖い。俺に拒否権はないらしい。大人しく杏の膝に頭を乗せる。
 隣じゃことみが思いっきり頬を膨らませて拗ねている。拗ねまくってる。こんなことみも珍しいな。

「おまえなぁ、いい加減俺達で遊ぶの止めろよな」
「い、や、よ。こんなバカなことできる期間なんて後ちょっとなんだから、あんたももっと楽しみなさいよ」

 いやでも意識してしまう頭の後ろにある柔らかい感触とぬくもりを感じながら、それを振り払うために強引に話題を作る。

「バカやろう。こんだけ振り回されて楽しめるかっつーの」
「そうでもないわよ」そういって顎をしゃくって、あっちを見てみなさいよ、と言うジェスチャーをする。

 大人しくそっちの方を見ると、相変わらずぶんむくれていることみが居た。ことみもあんな顔するんだなぁ〜と思うと新しい発見が出来たようで、ちょっと嬉しくなってしまった。
 さっきまでは古河が一人でなだめていたが、今は藤林も混じって二人でことみをなだめすかしている。
 まるで子供をあやすOLのようだ。子供をあやすのになれていない様がなんとも言えずに笑いを誘う。

「ああやってことみが嫉妬してくれるのも今のうちだけよきっと。後になって嫉妬することみが見たかったなんて言っても遅いんだから」
「まぁそりゃそうだが」
「そう考えてあんたももっと楽しくなるように色々やんなさいよ」
「解ったよ。でもよ」
「ん?」
「おまえそういって、やっぱり俺達で遊びたいだけだろ」

 返事の代わりに見やりと笑って答えた杏は「次はなにして遊ぼっかしらね」なんてことを抜かしやがった。
 俺は俺でこれからどうしよっかねと対策を練る事に、時間を費やすことにした。

 ホント、どーしょっかね?








おまけ







「ところでよ」
「なによ?」

 結局全員の膝枕を味合わされて終わった部活動(?)の学校帰りにずっと気になったことを聴いてみることにした。

「あの膝枕の順番ってなんだったんだ?」
「じゃんけんで勝った順よ」
「なんだ、ことみ一番負けたのか」
「うん、負けちゃったの。次は頑張って一番勝つの」
「あ〜、まぁ、頑張ってくれよ」

 それ以前に膝枕をされるなんていう状況がなくなることを、俺は祈るがな。
 そんな俺の祈りとは無関係に、ことみは頬を赤らめて
「でも次は……、朋也くんのお膝でお昼寝したいの」

 なんて事を言ってくれた。いや、二人っきりの時に言ってくれれば、そりゃ嬉しく思えるんだがさ。
 今はさ……

「それじゃあ、明日の活動内容は決まったわね」

 こんなこと言って悪巧むヤツが居るんだからさぁ。
 場所を選んでくれ、お願い。








おわり







---あとがき---
 ああ、杏って書きやすいなぁ〜。他の連中よりも圧倒的に書きやすいよ。
 こんだけ杏が暴れまわっていても、ヒロインはことみ何だから、困ったもんだわさ。
 次回があれば、もうちょっと努力することにしよう。ゴメン、今回ちょっとグデグデかも。

 それではそれでは、ここまで読んでくださった方々に沢山の感謝を込めつつ、今回はこの辺で。ではまた〜
 (05/08/09)

 P.S.mailformとかBBSでオラに元気をよこしなさい。

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