『Let Us only』


夜PM.10:00ごろ………

がちゃ

「ただいま」

素っ気無く明けたドアの向こうに居た彼女は入ってきた男を認識した途端に

く〜ん」

と言ってトリーシャは自分のダンナである彼に大喜びで飛びついた。
』と呼ばれた男はいきなり飛びついてきた彼女を辛うじて支える事に成功し、彼女を抱えたまま言った。

「おいおい、いきなり跳びつくなって、危ないだろが。」
「えへへ〜、でも嬉しいでしょ?」

抱きかかえられたまま今度はにキスの嵐を浴びせながらトリーシャは子悪魔のように呟く。

「う゛っ……あ゛あ゛〜もぉ〜飯だ、飯っ!! 」
「やっぱ嬉しいんだ」
「るっちゃい」
「そ〜んなに拗ねないの。」

トリーシャは顔を赤くしながらそっぽを向いてしまったの頬をひた指し指で突っつきながら言う。
そんなはバツが悪くなって、トリーシャに抱きつかれたまま“えっちらおっちら”とリビングへと向かった。

「所でトリーシャ………」
「なに?」
「いつまで、さも当然と言わんばかりにくっついてるつもりだ?」
「ん〜…何時までがいい?」
「あのな…」

あっけらかんとトリーシャは言ってくれる。
からかわれてばかりで流石に『反撃の一つでもしてやらにゃ』と考えたは、少し考え込んで『ないすあいでぃあ』を考えついた。
そしてニヤニヤと含み笑いをし、トリーシャをマジマジと見ながら、言った。

「トリーシャおまえ……」
「なに?ボクの顔なんかついてる?」
「応。」
「えっ、なになに!?なにが付いてるの?」

慌てふためきながら自分の顔に付いている物を払おうとしているトリーシャにはにんまりと笑って一言

「し・ぼ・う」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜………くんのいぢわるっ!!」

の答えにトリーシャはぶんむくれてそっぽを向いてしまった。はというとクスクスと笑っている。

「なぁ〜に笑ってるのさ?」

『ムゥ〜』という不機嫌なままの表情でトリーシャが言うとジョートは笑いを抑えて

「いや、ついてるものが『脂肪』って言われても否定はしないんだなと思って。」
「うう〜、幸せ太りだもん」
「それってフツーは男がなるもんぢゃないの?」
「もぉっ!くんってばホントに性質が悪いんだから!!そんなこと言ってるとトリーシャチョップしちゃうぞ!?」
「ハハハ、そいつは勘弁こうむりたいな。所で今日の晩飯は?」

いささか、からかいが過ぎたらしい。
トリーシャの目が少々据わっているのを見て流石にやばいと思ったか、苦笑いしては話をそらしながらトリーシャを―――ようやっと―――降ろした。
降りた(降ろされた?)トリーシャはまだ少し不機嫌そうで

「今日はね、ご飯にお味噌汁、かぼちゃの煮物にそれから鮭の塩焼き。」
「なるほど、そいつぁうんまそうだ。それじゃあさっさと着替えて飯にするから、悪いんだけど飯の準備頼むわ。」
「わるくなんかないよ。」
「そか、じゃあ『アリガト』。だな。」
「うん。あ、そうだった。くん」
「ん?」
「おかえり。」


出された夕食をはトリーシャが見守る(覗く)なかガツガツ喰う。喰う。また喰う。
そんなだんなの素晴らしい喰いっぷりを見ながらトリーシャは、ふと思い出したように話を切り出した。

「そういえば昼間お父さんが来たよ。」
「義父さんが?」
「うん。」
「で、なんて?」
「いつも通りのお節介と、それから………」
「それから?」
「『孫は何時だ?』だって。」

どんがらがっしゃん

はコケた。盛大にコケた。ご飯とおかずがとっ散らからず、本人だけが盛大にコケたのだから器用なコケ方である。
『よっこらせ』と体制を立て直しながらが呟いた。

「孫…孫と来たか……あの人は親バカから孫バカにでも変身するつもりか?」
「ボクもそうなるんじゃないかと思うと内心ドッキドキ。」

そう言いながら2人は結婚にこぎつけるまでの事を思い出す。
『大変だった……。ほんっとーっに、大変だった。』これが2人の素直な感想。
過ぎてしまえばなんとやらとはよく言ったものだが、二人はいまだにこのころの事をあっという間だったとはいえない。
結婚式当日も、泣き出すことはなかったが、誰も近づけるような状態ではなかった。
色々な意味で怖くて近づけない……

そんな事を思い出しながらはまた呟く。

「孫…ねぇ。ま、俺達には子供に当たるわけか。」
「そうだね。あ、くんくん」
「アン?」
「子供が生まれてきたらなんて名前がいい?」
「なんだ唐突だな。」
「でも生まれてきたら必要でしょ、名前。」
「まあ確かに……」
「で、なんて名前がいい?」

ワクワクしながらこちらを見ているトリーシャを見るとどうしても反射的にからかいたくなってしまう。
返ってくる反応は相変わらずかわいい。これは昔からずっとだ。好きな子にいたずらをしてしまう感覚。
『(俺もまだまだガキだな…)』そんな事を思いながら名前を考える‘フリ’をする。

「そうだな………トリーシャとか。」
「それはボクの名前でしょ!!」

思った通りの反応が返ってくる。トリーシャをからかうとやはり楽しい。それにこんなトリーシャの顔が見れて嬉しい。
この反応を見るとは思わず笑ってしまうのだが、トリーシャも負けじと攻撃をしてくる。

「それじゃあボクだって…『リカルド』とかは?」
「うぇ!?それは………流石にやめない?怖いよぉ〜。生まれてきた赤ちゃん義父さんにそっくりって言うのは………」
「うっ…確かに………」

どうやらからかわれた仕返しのつもりで言った言葉でトリーシは自爆したらしい。
2人は、髭を生やし、渋い面構えで、年不相応の逞しい体つきをしたリカルド赤ちゃんが『おぎゃ〜、おぎゃ〜』言っているのを想像しブルーな気分になった。
明るいはずの食卓の話題に暗い空気が流れる。そんな気分を一転するためトリーシャは話題をそらした。

「でもさ、赤ちゃんが生まれてきたら…お父さんとお母さんになるんだよね、ボク達。ねぇ、お父さんになるってどんな気分だと思う?」
「う〜ん…。なってみないとそういう実感って湧かないもんじゃねぇ?多分。」
「そうか…そうだね。なってみないと解んないよね。」
「多分、な。でも親になっても俺はトリーシャを『トリーシャ』って呼んでるよ。」
「なに?どう言うこと?」

‘?’マークを何個も搭載して『それってどう言うことアタック』を仕掛けてくる。
そんなトリーシャに優しく微笑みながらは言葉を紡ぐ。

「変にさ、『お母さん』とか呼ぶのって、なんかヤじゃない?なんつーか…『トリーシャ』って言う名前がなくなっちゃうみたいで。せっかく好きな女性(ひと)の名前なんだからさ、俺は何時までもトリーシャを名前で呼んでいたい。」
「えへへ…なんかテレちゃうね、こういうのって。告白されたみたい……」
「そうか?」
「うん。」
「そっか…」

そう言いながらは穏やかに微笑んむ。そして顔を赤くしてモジモジしながらテレているトリーシャを見やった。

「ボクも……」

不意にトリーシャが言った。

「ボクもくんのことずっと『』くんって呼ぶ。…大好きな人だから……」

いきなりそう言われてもテレてしまった。顔を赤くしながらポリポリと頬を掻きながら

「確かに…なんか告白されたみたいでこりゃテレるな。」
「でしょ?」

2人とも顔を赤くしつつ、しばしの沈黙が流れる。
やがてどちらからともなく笑いだすと、二人はゆっくりと見詰め合い、そして唇を重ねた。









ねぇ…



ん?……



生まれてくる子、なんて呼んであげようか………



そうだな・・・・・・・・・・・・・・・









<Fin>



あとがき
ハイ。ドリームです。初です。
いきなりネタが降って来たんで創ってみました。如何なもんよ?
ま、その後の事は好きにそーぞーしてちょうだい。んな感じ。じゃ、



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