無限の零 其の7



結局、更紗のエンフィールド学園への編入はあっさりと決まった。由羅にしても、本人の希望を叶えたかったのだろう。
ただ、ここでひとつの問題が出てきてた。学費だ。現在由羅の家には住人が3人。これに学費が加わるのははっきり言ってきつかった。
そんな訳で、学費についてはジョート持ち、ということで収まったが、これについては更紗には知らされることはなかった。
恩着せがましい事をする事をジョートが嫌がったためである。

入学については二週間の自己学習期間を置いてもらう事にした。
いきなり入って勉強に追いつかないと言う事態が発生しないようにするためである。

<2日後、夜 由羅宅>
更紗の入学祝と言う事でジョートショップ、自警団第三部隊の面々が和風な感じが漂う由羅宅に集まった。
ただ、第三部隊の面々については‘キャルと由良は色気のある仲か’ということを確かめに来たと言う事もあるようだ。
さっきからコソコソヒソヒソと話し声が聞こえる。さすがは年頃の娘を抱える第三部隊。こういうことには興味が多いらしい。

そしてそのキャルはといえば現在………ジョートに扱き使われていた、珠呂といっしょに。

「オラオラ、野郎ども!しっかり働きやがれっ!!」
「だからっ!何でてめぇ自分でやんねぇんだよ!!」
「メンド臭いからに決まってんだろ。第1卵50個なんて俺が泡立てられるわけねぇだろ。」

大きな鍋にバターを大量に入れて溶かしながら、ジョートはきっぱりと言い放つ。
そう、彼らは今ジョートに言われて卵50個をせっせと泡立てていた。『美味いもん作ってやるからおまえら手伝え』といわれ台所まで行ったのが運のつき。
『ハイ。』と卵を手渡されそれを割った後に今に至る。

「美味いもんが食える、美味いもんが食える……」
「そら、キャルを見ろ。文句も言わずにせっせと働いてるじゃないか。」
「イヤ…あれは文句を言わん代わりに自分に暗示かけてるぞ。」
「美味いもんが食える、美味いもんが食える、美味いもんが食える………」
「……う〜ん、これで不味いもん作ったら俺きっと殺されちゃうね。」
「たしかに…」

ブツブツ言いながら目が少々据わっているキャルを見ながらジョートはケラケラと笑っている。
珠呂の方は卵を泡立てながらも顔を青くして『笑ってる場合じゃないだろ…』と呟いた。
そんなことをしていると、二人後ろから声が聞こえた。

「ジョート、バター大分煮立ってきたよ。」
「ふみゃ〜バターがローズレイクみたいなのぉ〜」

更紗とメロディに呼ばれジョートは『応』と軽く返事をするとキャルと珠呂の方を向き、
「そっちはどーだ?」
「こんなもんでいいか?」
「オラァ〜〜!!!出来たぞコラァ〜〜〜!!!!」
「キャル…怖い」
「あはは〜キレちゃったみたいね。」

怯える更紗に空笑いで誤魔化そうとするジョート。 ‘触らぬ神に祟りナシ’と言う風にそぉ〜っとキャルから泡立てた卵の入った入れ物を受けとると、珠呂のそれと一緒に混ぜる。
そのままにたった溶かしバターの入った鍋に流し込んだ。

「すごいのぉ〜、もこもこふくらんでいくよ〜」

素直に驚くメロディと、‘コクコク’と首を縦に振って同意する更紗。一方のジョートは得意顔満面にして

「これをすかさずして二つに折るっ!!」

と言って膨らんで少し固まってきた物体を二つに折り曲げてドデカイ皿に盛り付けた。
それを『オイショ』と担いで由羅、アリサ、テディ、アレフ、パティ、フローネ、トリーシャ達の居る居間へ持ち込んだ。そして

「おりゃ〜出来たぞぉ〜。ホレ、しぼんじまわねぇ内にさっさと食うべ食うべ。」
「スフレオムレツじゃない。」
「しかもすごく大きいですよ。」
「うわぁ〜、ジョートさんすご〜い、こんなものも作れるんだ」

『ま、ね。』と言いながらトリーシャにウインクをして、ジョートはスフレオムレツを適当な大きさに切り分けてみんなに配った。

「ああ〜!キャル君もう食べてるっ!!」
「ガツガツガツガツ……ゴックン。るっちゃい!こういうのわな、早いもんがちなのっ!!」
「むぅ〜…」

物凄い勢いで食べるキャルにさすがの咲耶も呆れてしまい、腰に手を当て眺めるだけになってしまった。
そんな咲耶もオムレツの乗った皿を渡されると喜んで食べ始めた。彼女も空腹とオムレツからくる空腹をくすぐる匂いに敵わなかったのだろう。

「しっかしおまえの料理は相変わらず大雑把だな。美味いけど。」
「アレフ…美味いんだったら文句言わずに『美味しいです、ジョート様』の一言だけよこせ。大体おまえ、何にもしないでホスト君かましてただけじゃねえか。」
「よく言うぜ、俺に頼むことなんぞ一つもないくせに。」
「………それもそうだな。ちっ、呼ぶんじゃなかった。」
「そうよジョート君、どーせだったらクリスクンかリオクンを呼んでくれればよかったのに。」

イヂワルな気持ちを込めてジョートが舌打ちをすると、由羅もそれにワル乗ってきた。
被害者のアレフは『2人してひっど〜い』と言ってオヨヨオヨヨと泣きまねをする。そんな様子を見ていた一同は大爆笑。
その様子を見ていたジョートはさっきから気になっていた事を、アリサに耳打ちをして訊ねた。

「ところで、クリスとリオって誰?」
「クリス君はエンフィールド学園に通う学生よ。リオ君はバクスターさんのところの一人息子さん。」
「へぇ〜、バクスターさんのとこって息子が居たんだ。」

驚いた風でジョートが面食らっていると、オムレツを食っていたテディが『ジョートさん、どーしたッスか?』と訊いてきた。

「いやさあれね、もう何品くらい創ろうかってな、ちょっと話してたの。」

そういって台所へと戻ろうとするジョートに更紗がとてとてと歩み寄っ『あたしも手伝う。』と言った。
その言葉を聞いたジョートは更紗を見てニヤリ。「(あ、ジョートがこういう顔するときは…)」と更紗が遅まきながら気が付いたときにはジョートは既に行動を起こし

「デコピン」

と一言言って、更紗のでこにデコピンをかました。
『イタイ……』と目に涙をためておでこをさすりながら呟く更紗に『主賓はおとなしく飯食って祝われてなさい』と右向け右と更紗みんなの輪の中に戻し、自分は台所へと戻っいった。
台所に1人で戻っていくジョートを見ながら更紗は『ジョート……』とポツリと呟いた。





あとがき

長くてごめん。あと1話
じゃ、




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