無限の零 其の5



<夕方 サクラ亭>
仕事終わりの労働者が集う場所、サクラ亭。今ここは人で溢れ返っている。
シェールやビセット、トリーシャはすでに帰宅または仕事へと向かい既に居ない。
そして、ジョートと更紗はと言えば………サクラ亭の手伝いをしていた。
パティが第三部隊の仕事から抜けられなくなってしまった為急遽二人が手伝いをすることとなったのだ。

「お〜い、こっちビール!!」
「焼き鳥、軟骨塩でよろしく!!」
「こっちA定食ね!」

『はいよぉ〜』『ちょっと待って…』等々の台詞がジョートと更紗から飛び出る。おかげで現在今二人はてんてこ舞い。
親父さんとお袋さんが出す料理を二人でせっせと運んでいた。

臨時ということもあり、少々上乗せされた給料袋を手にジョートと更紗は帰宅の路についた。

「いや〜、やっぱサクラ亭のバイトって言うのはいいねぇ〜。」

ジョートの方はホクホクした顔で金の入った袋を上に投げて遊んでいたが、更紗の方はいまいち浮かばない顔をしている。
そんな様子に気がついてジョートは歩みを止めて更紗の前に立った。

「どーしたの更紗、なんかあった?」
「ジョート…」

自分の名を呼ぶ更紗の表情にジョートは疑問符。そんなジョートに更紗は言葉を続ける。

「ジョート、私が学校行く事、あまり良く思ってない。」
「え、なんで?別にそんな事考えちゃいないさ。」
「ウソ!昼間私が聴いた時のジョートの顔…反対してた。」
「反対してたて…別に反対しようとは思っちゃいなかったさ、マジで。…まあ良く思わなかったことは確かだけど。」

少し間が有った後にジョートから出た言葉は少なからず更紗にショックを与えた。

「なんで?」
「………それは………言えないな。」
「どーして!?」
「どーしてって…」

強く問い詰められるジョートは苦笑を交えながら、出来るだけ更紗が納得できるように言葉を選ぶ。

「あぁ…今はまだ言えないな。時じゃない。」
「‘時じゃない’?」
「そ、時じゃないの。別に言っても良いんだけどね、今言うと絶対に更紗の不安を煽る。そーゆー事だけは絶対にしたくないから。」

フと真面目な表情で話していたが、言い終わるとまた苦笑いを浮かべる。、その顔には色々な感情が混じっていた。
不安、期待、優しさ、愛おしさ…全てを混じらせてジョートは更紗の頭をクシャクシャと撫でつけた。
撫でられた更紗の方はと言うと、相変らず自分の事を考えてくれる事と嬉しさと、相変らず自分の事を中々話そうそしてくれない事への寂しさが混じる。複雑。

「更紗、ちゃんと話すから。」
「うん…」

優しく微笑みながらジョートは言った。自分の考えている事が見透かされるようで更紗は顔を逸らしてしまう。
そんな更紗をジョートは愛しく思いながらゆっくりと更紗を抱きしめた。
互いの温もりを感じると2人はゆっくりと見詰め合い笑顔を零す。そしてゆっくりと唇を重ねた。

<2日後 ラ・ルナの一室>
化粧と言うものにはする人間によって目的がいくつかある。
自分を美しく見せようとする者、舞台等で顔の輪郭をはっきりと召せる為にするもの、自分の素顔を隠す為、即ち変身願望を叶える為にする物。
目的は其々だが、化粧をすると言う点に変わりは無い。

ラ・ルナの一室でジョートは髪をオールバックにしてカチューシャで留め化粧を始めた。そして自分の素顔を化粧で隠しマスクの変わりにする。
化粧を仕上げると何時も以上に中性的になった顔がそこにある。そのままの顔でジョートは服を着替え始めた。
そして、カチューシャと外して軽く前髪を創り、束ねた後ろ髪をジャケットの中に突っ込む。
正面から見ると、丁度短髪に見える感じと言えば、想像はつくだろうか。
靴を厚底に履き替え、身長を上乗せすると、最早パッと見ではジョート本人と解る人は少ないだろう。目的はそこにあった。

身支度を整えると化粧台の前に座り、ジョートは目を瞑った。精神統一。イメージトレーニングと言っても良い。
暫くして厨房からリーゼが顔を見せ、言った。

「ジョート君、そろそろ出番よ。」

その言葉が聞こえたようで、ジョートはゆっくりと目を開き静かに席を立つ。
何時ものジョートとは打って変わった雰囲気で回りにはオーラのような物が見えそうなそんな印象を受ける。




あとがき

例によってクソ長くなったんでここでぶった切りました。
次で終わります。
この話しの前半は個人的にお気に入り。
じゃ、




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