無限の零 其の2



<同時刻、由羅宅・台所>
更紗は困っていた。実に困った事態だった。エマージェンシーを発動したいがイヤな気分ではなかった。それが余計に困った事態となっていた。
彼女は今現在朝ご飯を作っている真っ最中である。そんでもって料理している彼女の零cm後ろにはジョートが居た。
つまりジョートは更紗を後ろから抱いているたのだった。そして彼は困った表情をしている更紗を見ながら

「更紗…大好き」

と優しく囁く。更紗はこれに弱かった。更紗は顔を真っ赤にして下を向いてしまう。
そんな更紗が可愛くてしょうがないと言った様子でジョートはぎゅ〜っと壊れ物の様に大切に、そしてまた強く抱きしまる。
さっきからこの事の繰り返しだった。これが更紗の困ってる直接の原因。溜息。

トントントントントン……

味噌汁の具を切る音が静かな台所に響く。更紗はジョートの温もりに安心感を覚える。
肌で触れ合うだけだ安心できる。更紗はその感覚に身を任せ始めた。
具を鍋の中に入れて煮込む。
暫くしてジョートが静かに更紗の首筋にキスをしてきた。今まで口付けを交わす事は多々あったが首筋は初めての事だった。
『えっ…』驚いて声をあげるがジョートは気にも止めずにそのまま下を首に這わせる。
その感覚に思わず『あっ…』と声を漏らした。艶のある色っぽい声。高揚した頬で弱々しく言った。

「ジョート、ダメだよ…」

必死にもがいて逃げようとするがそこは如何せん男と女、ジョートと更紗では力に違いがありすぎた。

(更紗更紗更紗更紗更紗…………)
ジョートの脳裏を更紗が埋め尽くす。
ジョートは止めなかった。より正確に言えば止められなかった。何故か不意に覚えた不安。時々感じる自分の心と心が攻めぎ合う葛藤。
そして離してしまえば消えてしまいそうな…不安を掻きまわす感覚……
更紗が大好きと言う確かな『ナニカ』を残したくてジョートは更紗の首筋にキスをし、徐々に耳の方へと下を這わせ、更に事に及ぼうとした。
が、結局それが成される事はなかった。

「2人とも、朝っぱらからイチャつくのは構わないけど場所弁えてもらえる?」

由羅とメロディだった。

「なぁ〜んかさっきから味噌汁にしては時間がかかるわねぇとか思ってきてみれば…これだもの。」
「ふみゃあ〜、ふたりとも、なにしてるの〜?」
「チッ、折角イイとこだったのに…」

軽くしたうちをしながら我に返ったジョートは更紗を開放した。そしてさっきまでの不安を隠すように、余裕を見せながら軽口を叩く。
更紗のほうはいまいちまだ現実に戻れて来ていないようで、うわのそらな表情でポーっとしていた。

「だから、場所弁えなさいって言ってるでしょう?」
「へぇ〜い、ヘイヘイ。ま、味噌汁の方はチョイト煮過ぎたかもしれんけど、ダイジョブっしょ。どう、更紗?」
「えっ?」
「いや、だぁら…味噌汁。」

ジョートに話しを振られて更紗はようやっと現実に戻ってくる。慌ててジョートが指差した鍋の中を調べてみる。なんとか無事な様だった。

「それじゃあご飯を盛って、楽しくご飯にしましょうか。」
「うっわぁ〜い、ゴハン・だぁ〜!!」

そう言って由羅は酒を持ってリビングに行ってしまった。メロディはどたばたとゴハンの支度を始める。
2人の間になんともいえない空気が流れる。そしてお互いを見詰め合うと、何かお互いの気持ちが通じ合うような感覚が二人を包み込んだ。
やがて、どちらからともなく『プッ…』と笑いを堪え切れずに噴き出してしまった。笑いが零れるとさっきまでの雰囲気は何処へやら、一転して和やかな空気が流れた。
そしてジョートは申し訳無さそうに苦笑いしながら更紗に言った。

「ホント、ゴメンな。」
「ううん、良いの。」
「ありがと。でも俺は更紗が大大大大大大大大大大だ〜い好きで、その思いが今でも溢れてる。だから………」
「だから?」
「いつかその思いがさっきみたいに行動で出ちゃうかもしれないけど、その時は……受けとめて欲しい。」

それがどう言う意味を指すのかを理解した更紗は顔を紅くして俯きながらも頷いた。
言ったジョートのテレが来たらしく鼻の辺りをポリポリ掻きながら『なんか…プロポーズみたいだな。』と苦笑した。
そして、また何時ものおちゃらけが始まり

「そ〜れにしてもさっきの更紗の声、色っぽかったなぁ〜…」

と更紗をからかいだした。更紗は‘ボンッ!’と言う音と共に体中を真っ赤にして『ジョートっ!!』と叫んだ。

ジョートの方はと言うと決をペンペン叩きながら更紗を挑発する。更紗は怒ってジョートを追いかけ始めたが

「へっへ〜んだ、ホレホレここまでおいでぇ〜」

とジョートは逃げ出した。それを見たメロディは『ああ〜っ!うたりともずるぅ〜い。メロディもおっかけっこするで〜す!』と言って2人の後を走り出した。
『やれやれ』と珍しく溜息を漏らした由羅は酒を一口飲むと『今日も平和ねえ〜』と1人呟いた。




あとがき

特にどっか変わったわけではありません。長いのにムカついて切っただけです。
さてさて…一体何話まで続くやれ…溜息。
じゃ、




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