人間ってそんなものね。



ここ一週間でジョートと更紗はセットと言う考えが街の中での一般的な物となった。
更紗を伴ってからのジョートはそれまでに無いくらい色々な所で良く働くようになり、色々な人と知り合った。
それに伴いジョートと更紗の知名度は一気に上がって知らない人がいなくなってしまった。

これにはちゃんとした理由があって一番大切な理由が『更紗を街に馴染ませる』と言う事だった。こっちは大分達成できていた。
もう一つ大切な事があるのだが、そっちは珠呂が密かにアリサと動いていた。それについては後々語る事としよう………


夜―――

夕飯時その日の仕事も粗方片付いたが、仕事時間は後少し残っていた。しかしジョートはいったん仕事を切り上げ隣にいる更紗に顔を向けて言った。
因みに本日の仕事は『洋服屋ローレライにて副業で行われている美容師の仕事の代理』だった。ルーティが風邪のため急遽ジョートが代役を務めることになったのだ。

「更紗、腹、減って無いか?」
「ううん、大丈夫。」

そう言って更紗はジョートを見上げる。因みに二人の身長差は結構ある。ジョート:180、更紗:147だから33cm差。更紗肩凝ってんだろうなぁ…。
そんな事は置いておいて、ジョートは更紗をジーッと見ると急にしゃがみ込んで更紗の目を見る。
そして暫く見詰め合っていたかと思うと、また急に、今度はジョートは更紗の頬を引っ張った。

「更紗嘘は行かんよ嘘は、今おまえの眼は『腹減った』と確かに言っていた!!」

やっていることは無茶苦茶だが確かに更紗は空腹だった。昼食を取ったのがもう随分前のため、目を見なくとも別に腹が減っていることは誰だって予想がつくのだが、ホントかどうかを知るためにジョートは目を見る。
『む〜にぃ〜』と軽く引っ張られた状態で、更紗は軽く涙目になりながら『ごめんなひゃい』と言った。そんな更紗を見ながらジョートは『よしっ』と言って笑顔で更紗の頭をなでる。そして

「それじゃあ飯でも食いに行くか。」

といってサクラ亭に足を向けた。『うん』と更紗は肯きジョートの後を追う。

「こうやって歩いてっと俺等ってどう見えんのかね?」

不意に言い出したジョートを見て、更紗は暫く考える。そして、一言呟いた。

「兄弟……かな。」
「やっぱそう見えるか。まあ親子に見えないだけましかな。」

一瞬、更紗は少々がっかりしたような表情が見たような気がしたが、次の瞬間には元の表情に戻っているじょーとを見て更紗は『気のせいか』と思う。
そして、それが気のせいかどうかを確かめるために、ジョートに聴いて見る事にした。こう言う時に遠慮をするとジョートは必ずといっていいほどからかって来る。先ほどの頬を引っ張るのが良い礼だ。

「ジョートはどう見られたい?」
「俺?」
「うん。」

ジョートは暫く考えこむ。イヤ、どちらかと言うと、言うか言うまいか迷っているようにも見える。そして、意を決したように、ジョートは呟いた。

「俺は………そうだな、『恋人』…かな。」
「えっ?」

更紗は思わず立ち止まる。考えてもいなかった答えが返ってきたからだ。
そもそもどんな答えが帰ってくるかすら考えてはいなかったが、これは意外中の以外だった。
どう反応していいのかも分からずオタオタとしていると先を歩いていたジョートが向こうの方で自分の事を読んでいた。
更紗は『待って』と短く言ってトテトテとジョートの方へと小走りで走って行った。

一方そんな台詞を言ったジョートの方も実は頭の中は大混乱していた。
表面上はシレッとした『フリ』をしていたが、頭の中はパニックに陥って何を考えているかもワカラナイ。
そのために更紗のことも忘れてズカズカと歩いて行ってしまったほどである。我に帰った瞬間に更紗が居ない事に気付いて慌てて回りを探した。
(やっべー…、ぜ〜ってぇ〜この後気不味くなんよ!ああああ…や〜っぱ言わねぇ方がよかったかなぁ……チックショー俺としたことがやっちまったよぉ〜!!………これからどうするよ?)
チョット冷静になった頭をフル回転させるがこれと言った考えも出てこない。結局辿り着いた答えは『なるようになる』だった。
どのみちもうすぐ全てが片付く。そうなればフラれても上手く顔を逢わさないようにする事も出来るし、逆に上手く行けば何時でも顔を合わせられる。
どーにでもなれ、そんな事を考えながらジョートを更紗を見ながら固く微笑んだ。

サクラ亭につくまでの二人もこれまでとは打って変わって妙なギクシャク感があったが、サクラ亭について更にそれが増す事が起こった。
サクラ亭に入った二人を見て見せの中にいたおっさんの内の一人―――ガテンの仕事をしている時にお世話になっている親方だった―――がいった一言

「よ、ジョート、今日も可愛い奥さん連れてるなぁ!」

と言う一言だった。言った方としては何時も通りのからかい言葉だったのだが、如何せんタイミングが悪かった。
ジョートの方は何時もの事なので軽くあしらう程度で終わったが、更紗の方は『ボンッ!』と顔を真っ赤にしてしまった。

「えっ!?」

それを見たジョートがビックリして思わず声を上げてしまった。しかもその更紗を見て連鎖的にジョートまで顔を赤くした。
これを見たサクラ亭の客一同は一気に冷やかしモードがオンに入った。
大体がジョートに向けられた物で『ロリコン』だの『青少年方に引っかかるなよ』だのといった物だったが、中には『結婚は何時ですか?』だの『お子さんは何人?』と言ったどう考えても話しが飛躍しすぎている物まであった。

ジョートは野次に耐えていたが、更紗の方は可愛そうに、顔だけに収まらず体中を真っ赤にしていた。
そうして暫くすると、ついにジョートがプッツン切れたらしく大声で叫んだ

「嗚呼〜〜〜もうっ!!わ〜かったわい、この馬鹿どもっ!!これからはそんな野暮ったい事言わずに『ナイズカッポー』と呼べっ!!!そう読んだらジョートショップでの仕事を一割…イヤ、ニ割引にしてやるっ!!!!」

それを聴いた瞬間、店中がざわめいた。そして矛先が全部ジョート向いた。『ジョート、それ本当か?』『よし、それじゃあ明日からジョートショップに仕事じゃんじゃん頼むとするか!』
そんなざわめきの中、ジョートはもう一度店内に響く様に大声で叫ぶ。

「た〜だ〜しっ!俺が担当する仕事だけだぞっ!全部の仕事をニ割引にしたらアリサにも迷惑がかかるからな。分かったらこれからはちゃんと『ナイスカッポー』と呼べっ!?いいな!!」」

言い終わるとジョートは明日から仕事を頼もうとするオヤジどもにアッと言う間に囲まれてしまった。
一人取り残されてしまった更紗は暫くポツーンとしていたが、同じく仕事が一段落した珠呂が店に入ってきて話しかけてきてくれたおかげで一人にはならなかった。

更紗は話しの中核だけを摘み程度に珠呂に話した。話しを聴いて珠呂は『あんの馬鹿…』と軽く呟いて殴りに行こうとしたが、更紗が『ジョートは悪くない』と言って珠呂の服の裾を掴んで離さなかった。
それを見て珠呂は更紗の頭に手を置き、くしゃくしゃと撫でて『分かったから』と優しく微笑んだ。
更紗はホッと肩を撫で下ろしジョートが呑み込まれていった方を見やる。 暫くすると人が一人、二人と順々にテーブルに伏せていった。更に暫くすると、ジョートの回りにいた全ての人がテーブルに伏せてしまい残ったのはジョートだけになってしまった。
珠呂は額に手を当て『あの化物め……』と軽く呟いた。更紗は相変わらず何がなんだかわからなくて自分の方に―――顔を幾分赤くして―――来たジョートに尋ねた。

「ジョート、今まで何やってたの?」
「ん〜?野次馬どもがあまりにもウザかったから、バーボンストレートで飲み勝負して、全員酔い潰したの。」
「………そんな事してるとおまえ、何時か肝臓壊すぞ?」

更紗は何も言えなくなって顔を青くしながら固まってしまい、珠呂はジョートを心配して呆れながら言った。
するとジョートは今珠呂の存在に気付いたように珠呂の方を見て言った。

「あっれぇ〜、珠呂のそっくりさんがいる〜。ダメだよ更紗〜、珠呂に近づいたら子供が出来ちゃうからねぇ〜。」
「おまえやアレフじゃあるまいしそんなわけあるかっ!」
「あはは〜向きになって否定する所があやしぃ〜なぁ〜」
「五月蝿い、酔っ払い!さっさと酔い覚まして来い!」
「ん〜、あ、そうだ。珠呂。」
「あんだよ?」

ジョートはトイレへ向かおうとして振り帰って珠呂に言った。

「わりぃ〜んだけど、今日そのまま更紗を連れてってあげて。俺はどうにも無理そうだから。それから、今日は多分公園辺りで打ち上げってると思うから店には戻れないと思う。」
「わかった。風邪引かんようにな。」
「引いたら珠呂君に看病してもらうよ。」
「それがヤだから引かんようになって言ってんだよ。」
「よぉ〜し、頑張って風邪引こうっと。」
「だから引くなっつってんだろっ!!」

そんな会話をしながらジョートはトイレに向かってフラフラと歩いて行った。珠呂はジョートを見送ると更紗に向かって言った。

「それじゃあ、今日のところはもういいから家まで送るよ。」
「でもジョートが…」

心配する更紗を珠呂は屈んで、なだめるように更紗に言う。

「大丈夫、あいつゴキブリ並にしぶといから。殺したって死なないって。それに一晩公園に酔い潰れたジョートといるつもり?そんな事させられないから、第一そんなことしたら俺達が由羅に殺されちまう。だから今日のところは、な?」

由羅の名前を出されると更紗は弱い。彼女も居候の身である。由羅には心配かけられない。そんな訳で更紗は渋々と納得し珠呂と一緒に帰っていった……

後にはジョートによって酔い潰されたオヤジどもの屍が残り、後片付けをするパティが大変な目に遭ったとか遭わなかったとか、遭ったらしい…。

因みにジョートの方はトイレで胃の中のものを粗方イジェクトし、酔いを覚ました後にリベティス劇場にて朝までいたらしい。
朝になってリベティス劇場からリーゼとジョートが出て行く所を、通学途中のマリアが発見し、話しは変な方向へと流れ始めた………。



あとがき

おわんねぇ〜よぉ〜(涙)。終わる予定だったのに………。
予定は未定なんだよね、何時でも。
と、言う訳でまだ続きます。終わると思ってた人ごめんなさい。
次も読んでくれるならありがとう。
じゃ、




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