人間ってそんなものね。



― 0 ―

由羅からの依頼があった次の日、二人は早速行動に移した。頼まれた内容からこう言う物はさっさと行動に移した方がいいと判断したためである。

二人は由羅の了解を前の日の夜中に取りに行き、これからの予定をザッと話した。由羅は快く了解し『更紗の事は頼んだわよ?』と二人に言った。
その後は勿論二人とも捕まって『作戦を行動に移す祝い』と言う、要は由羅の酒飲みに付き合わされたが、結局はジョートと由羅の飲み比べに終わってしまい、隙を見た珠呂は逃げ出したのだった。

朝になって珠呂は更紗を迎えに行きケロッとしている由羅を見てゾッとしながらも昨日の打ち合わせ通りに更紗に由羅と一緒にジョートショップにまで来てもらう事に成功したのだった。
でもなんかここまでの行動って…小さい子を誘拐するみたいなプランだね。(汗)


― 1 ―

「と、言う訳で更紗、君にジョートの追跡を頼みたいんだ。」
「『と、言う訳で』ってどう言う訳?」

顔の回りに‘?’マークを撒き散らしながら朝っぱらから呼び出された更紗の変わりに由羅は珠呂に尋ねた。
確かに『と、言う訳で』とは言ってはいたが珠呂は具体的な事は何も言っていたい。
ジョートショップに入ってきて『おはよう』と言われた後に言われた言葉がさっきの言葉だった。

「あ、あれ?俺、まだ何も言ってなかったっけ?」

更紗はコクンと大人しく肯きながら『珠呂ってこんな人なのだろうか?』などと思いながら珠呂を見た。
珠呂の方歯と言うと、自分の抜け作加減に顔を赤らめながら‘コホン’と咳払いをして話しを続けた。
―――その姿を見てクスクスと笑っていた更紗を見て多少の手応えを感じながら―――

「でだ、更紗。君にはさっきも言った通りジョートの尾行及び追跡をお願いしたいんだ。」
「なんで?」
「それはだな……ヤツの行動がここの所おかしさを極まっているからなのだよ。」
「?????????」
「イヤ、ヤツがおかしいのは今に始まった事ではないんだけど、今まで以上におかしいんだよねェ。」
「どうして?」
「それを君に見つけて欲しいんだ。」
「珠呂はやらないの?」

更紗の言葉を聴いた途端珠呂はフと遠い目をして『やったら酷い目にあった……』と呟いた。
『そんな酷い目に合うかもしれない事をやらさせられるのだろうか?』と不安になって断ろうとすると、それを察したらしい珠呂が更紗を安心させるように言った。

「ダイジョーブ、ダイジョーブ。ヤツ基本的にはイヤガラセは男で気心知れてるやつにしかやらないから。女の子には基本的にはそう言う事はしないよ。」
「アラ?ジョート君てフェミニストだったの?」
「だと思うよ。で……お願いできるかな?」

そう聴かれて更紗は一瞬戸惑う。更紗はジョートと言う人間をあまり詳しく知らない。これはジョートに限らず街の人間の殆どに言えた事なのだが…。
由羅の方を見ると由羅はニッコリと笑って『やってみなさいな』と小さく、更紗に聞こえる程度の声で呟いた。

「分かった。やってみる。」

小さく、でもはっきりと言ったその言葉を聴いて珠呂と由羅は嬉しくなってしまいついつい二人して更紗の腕を掴んでブンブン振ってしまった。

「二人とも…いたい……」

更紗のその言葉を聴いて我に帰った二人は『ゴメン』と更紗に謝り手を離した。
手を離した珠呂は奥に行き一着の服を取ってきた。

「やっぱり尾行と言ったらこの格好だろう。」

そう言って珠呂が広げたのは黒のスーツに白シャツ黒ネクタイサングラスにハット帽と言った、ドラマ『探○物語』を思い出させるような服だった。

「これ……着るの?」

顔を少々青くした更紗が呟いた。さっき言った言葉と決意がグラつく。

「もちのろん!尾行追跡と言ったらこの格好以外有り得ないね!!」
「珠呂君……センス悪いよ。」
「えっ!?なんで!!?」

由羅にセンス悪いといわれて珠呂が言葉を返した途端、2階の階段の方から『ブ―――――――っ!!』と笑いを堪えきれなくなったような吹き出した声が聞こえてきた。
珠呂と由羅には心当たりが合ったが更紗には一体何が起きたのかがさっぱりワカラナイ。二人は慌てて適当に言い訳をした。

「き、きっとテディ君のいびきよっ!!」
「そーだそーだ、テディのいびきだな。アイツのいびきは凄いから…」
「そうなの?」
「「そうそう」」

そう良いながだブンブン首を縦に振る二人を見て‘何がなんだか…’と思いながら珠呂が持ってきた服を見る。………着たくない。
正直な感想が出た。そんな気持ちを察したか由羅も『別に普段着で良いんじゃない?』と更紗に味方する。
由羅にまでそう言われ珠呂は渋々と服を畳んで奥に持って行った。

部屋の奥に行った珠呂は『おっかし〜な〜…?確かにジョートは『この服が良い!!』って薦めてた筈なのになぁ…あいつもセンス悪いって事か?』などと呟きながら服をしまう。
勿論これは珠呂をからかう為にジョートがついたデマカセなのだが…。これを知らされた珠呂が仕事中にも関わらずジョートを殴りに行ったのは数日後の事。

由羅達の元に戻ってきた珠呂に更紗は尋ねた。

「尾行ってどうすればいいの?」
「具体的にはヤツに貼り付いててくれれば良いよ。特に何かしなくちゃあいけない訳じゃあない。一緒にいてくれれば良いさ。」
「それだけで良いの?」
「ああ、充分だ。」

そう言って優しく更紗の頭をなでた珠呂は時計を見て『ヤバイっ!!今日の仕事に送れるっ!!!』と言いながら慌てた様子で表に行ってしまった。
由羅も、『それじゃあ、ここから先はアナタの仕事ね、が〜んばってねぇ〜。』とライトに言ってサクラ亭に酒を買いに行ってしまった。


― 3 ―

残された更紗は一人ポツーンとしていたが、一人で居た時間はそんなに長くなかった。上から人が降りてきたのである。ジョートだった。
ジョートは長い髪をボッサボサにしながら掻き毟りながらねむそ〜に『オハヨ』と短く更紗に言った。
更紗は対応に困ったがジョートはそんな事を気にする事もなく洗面所へと行き顔を洗い歯を磨く。

ようやっと寝ボケが取れてきたらしく、『はぁサッパリしたぁ〜』と言いながらタオルを方に書けながら再びリヴングに戻ってきたジョートは更紗を見て

「アンタ……誰?」

と‘?’マークをくっつけながら言った。更紗は『更紗』と自分の名前だけを短く答えた。

「更紗、ね。良い名前じゃん。で、ここに何しに来たの?」
「ジョートって人を尾行するようにって言われて来たの」
「ふ〜ん…ジョート、ね。ところでそのジョートってどんなヤツなの?」
「えっ!?」

ビックリした様子で更紗が声をあげる。そう言えばそうだ。更紗は珠呂からジョートと言う人間についてなにも聴かされていない。

(最近ジョートショップに新しい居候が転がり込んで来たと言う話しは聴いてはいたが、それがジョートだろうか?だとしたらこの人がジョート?)

そんな事を考えながら更紗は2階から降りてきたこの人間を観察する。

(黒く長い艶のある髪。髪と同じ色をした目何もかも見透かしていそうな、それでいて何処か……)

そこまで思うとやはり2階から今度は一人と一匹が下りてきて二人に挨拶をした。

「アラ、更紗ちゃん。おはよう。ジョート君も。」
「二人とも、おはようッス〜。」
「ああ、二人ともおはようさん。」
「ところで、どうして更紗さんが朝からジョートショップにいるッスか?」
「オレを尾行しに来たんだと。」
「そうなんスか?」

テディに尋ねられ更紗は思わず肯いてしまい、自分の先ほどの台詞の迂闊さに気付いた。
そうさっき自分はこの人に言ってしまった『ジョートって言う人を尾行するように言われてきた』と。
………ジョート本人に

戸惑いの表情をしながらジョートと言う人間を改めて見る。ジョートは先ほどとは違いニッコリとした食えない笑顔で更紗に言った。

「俺の尾行、頑張ってね。」

………祭りは、まだ始まったばかりだ。




あとがき

さてさて、まだ続きます、このお話し。一体何処まで続くのやれ。
オイラにもよく分からんですが、そんなに長くならないように頑張りたいと思います。
因みに全く書き溜めはしてないよ。そんな事で着るほど大人な性格してないし。(笑)




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