無翼



『拝啓、お父さん、お母さんお元気ですか?私は元気です。
 最近は精霊界との仲介役も一段落し彼等世話する前のような生活が続いています。
 でも前とは違って色々な事が楽しいです。これもきっと彼等のおかげだと思う。

 そう言えば、前の手紙にも書いたけど、二人目のお母さんとも相変わらず手紙のやり取りをしています。
 私に不自由をさせたくないと相変わらず言ってくれているけど、その気持ちだけで充分。
 だって、私は今とっても充実して楽しい日々を送っているから………。

 また今度手紙書くね、こう言う言い方も変だけど…、元気でね。
 

アイラより』


最後に自分の名前を署名したアイラは封筒に今しがた書き終えたばかりの手紙を入れて封をした。

「これでよし。」

そして一言呟くとまた違う紙に手紙を書き始めた。今度は生きている方のお母さんに書く手紙。彼女は最近二人の両親に手紙を書くことを努めている。
理由は簡単で片方だけに出すのはなんか偲びないからだった。両方とも彼女にとっては大切な父であり母であった。
片方だと言うのは不公平と感じたのだろう。彼女の格言にこう言うのがある。
『お金とお仕事の量は平等に』何かがちょっと違う様な気もするがそう言うものなのだろう。

暫くの間彼女はテーブルの上でペンと格闘し自分の近況等を軽く報告する。内容は精霊たちの相変わらずの行動や仕事での笑い話などなど。
最後に『今度暇を見つけて遊びに行く』と言うような事を書き、先ほど同様最後に自分の名前を署名し封に入れる。

「じゃあこっちはさっさと出しちゃいますか。」

彼女はそう言うと『生きている方の母親』への手紙を手に取り足早に郵便局へと向かった。もう片方の手紙は近々送る予定である。


その頃エルファーロの森では先ほどアイラの手紙で話題に出て居た精霊たちが額を寄せ合って何やら話し合いをしていた。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ………、で、結局どうするんだよ………。」

アッシュが息を切りながら話しを切り出す。今の今まで彼はフラッシュに追いかけられていた。
どうやらおふざけが過ぎたらしくフラッシュが切れたらしい。アイラだったら一睨み効かせて止める事が出来ただろうが今この場に彼女はいない。
と言うよりも居たら困る。それはカタンについても同様に言えることだった。どうやら彼等には内緒にしておきたい事のようだ。

「そうじゃのぉ、小娘についてはきっと『金』とか言い出すじゃろうし、カタンは『要らん』と言うだろうからのぉ。」
「だからメリル、言ってるだろ?アイラにはこのオレから直々に愛を渡すから、皆はカタンの方を考えてれば良いって。」
「そうは行かないってルシエル。だって、これはアタシ達皆からでなきゃ意味がないんだから。」
「そうですわね…ホント、どうしましょう?」
「ねぇねぇ、お菓子あげるって言うのは?」
「…むぅ〜、むぅ〜〜〜〜〜むぅ〜〜〜〜〜」

皆それぞれに悩んでいるらしい。最後の二人はどうやら違う事も混ざっているようだが…。
最後の『むぅ〜むぅ〜』言っているのはフラッシュである。
どうやらアッシュとの追っかけっこで疲れている所を再び暴れないようにふん縛られて猿轡までされたらしい…。
因みに彼が言おうとしていたのは『それはお二人に差しあげる物ではなく、ピア様が欲しい物でしょう。』だったようだ。
『いい加減にこのロープを解いてください』とも言っているようである。

「でもさぁ、今更こんな事しなくても良いんじゃないの?」
「なんでそう思うのさ?」

フェイの考えにアッシュが訊ねる。

「だって、もぉ一年なんだかんだで付き合ってるのよ、違いの気心知れてるんだから今更こんな事しなくても良いんじゃない?」
「イヤ、『今更だから』さ。もう一年もかかってるって言うのに未だにアイラをデートに誘う事に成功してない…これはオレの死活問題に関わる…」
「ルシエルの死活問題はさて置き…」
「こらメリル、俺の死活問題はどうでもいいっつーのかよ!?」
「よい。」
「………そんなにはっきり言わなくともよいのでは…」

はっきりとルシエルの「死活問題」を切り捨てたメリルに流石に可哀相に思ったかイルミナが救いの手を差し伸べた。しかし

「今そやつの死活問題とやらを協議してるでないでな、本題の方をさっさと片付ける方がいいと思うがの?」

の一言を聞くと、あっさりと意見を覆して『それもそうですね』と言って再び『本題』の方を考え始めた。
ルシエルの方は隅ぃ〜っこの方へ追いやられたような気がして拗ねてしまった。
暫く残ったメンバーでウンウン唸っていると

「随分前にやった茶会を開くと言うのはどうでしょう?」

いきなり背後からフラッシュの声がして一堂はビックリして後づさった。

「フフフフフフフラッシュ…!?あんたどーしていきなり声なんて掛けてくるのよ!!?」
「そうじゃぞ。ちゃんとロープで締めて猿轡までしたはずじゃぞ?」

フェイとメリルの疑問にフラッシュは埃を軽くパンパンと払いながら答えた。

「どうもほって置かれっぱなしだったのでいい加減困り果てまして、ピア様に解いていただいたのです。」

一同は『あちゃぁ〜…』と嘆き声をそれぞれにあげたが、フラッシュもどうやら頭に昇った血も収まったようだし何より悪気のないピアを責めるわけにもいかず一同は『仕方ないか』と目を合わせたのだった。

「でどうです?お茶会再びと言うのは?」
「ん〜…悪くないけど似たような事を2度もするって言うのはちょっとね…。」
「ですが他に思いつく事のないでしょう。」
「そうじゃの…仕方ない茶会も候補の一つとして、本人達にさり気なく聴くとするかの。」

そう言ってメリルが締めると話し合いはいったん幕を閉じたのだった。


次の日、精霊達の話し合いも露知らず、カタンとアイラは相変わらずの生活を送っていた。
相変わらずとは言ったが二人とも一年前とは随分と『相変わらず』と言う言葉が示す行動が変わってきている。
カタンもアイラも以前とは違い人とのコミニケーションを取るようになっていた。
アイラの方は変わっていないようにも見えたが、以前ほどの金への執着心は消え、心からの笑みが見えるようになった。
それに比べ、カタンの変化は明らかだった。以前よりも外に出るようになったし街の人との会話もするようになった。
そして、決まって朝アイラの家を訪ねるのが彼の日課となっていた。勿論アイラの事だ、来たからにはちゃっかり働かせてはいたもののカタンの方は別段気にしていなかった。

「あら、カタンおはよ。あんたも朝っぱらからよく来るわね。」
「おはよう、アイラさん。それからフェイさんにルシエルさん」

今日も今日とてアイラをナンパしに来たルシエルは‘それから’と言う台詞にルシエルは反応してフェイに言った。
フェイがついてきたのは、昨日の話し合いの通り二人が欲しい物をさり気なく聴きに来たついでに、お茶でも頂こうとちゃっかり考えたようだ。
何故フェイが聴きに来たかと言うと、あみだくじで決めたらしい。

「あらヤだ奥さん、聞きました?‘それから’ですって‘それから’。あたし達、まるでおまけみたいじゃあございません?」
「なんで井戸端会議調になってるのよ…」
「いや、なんとなく。」

アイラの後ろで馬鹿話に華を咲かせているルシエルとフェイを無視してアイラはカタンの方に向き直った。

「…なにやってんだか…で、毎日毎日、あんたも懲りずによく来るわね。」
「ウン、アイラさんの顔見てないとなんだか落ちつかなくって。」

相変わらず人の良い笑顔で言うその言葉を聴いてアイラは顔を真っ赤にする。
時々カタンは聴いているこっちがこっ恥ずかしくなるような台詞を自覚もなくサラリと言う。
アイラは真っ赤になっているであろう自分の顔を見られないように花壇の世話をする『フリ』をした。

「どうしたの、アイラさん?顔赤いけど」
「な、なんでもないわよっ!まあいいわ。今日は朝の仕事が終わったら特別にウチで朝ご飯で…ってきゃあ!!なにすんのよアンタは!!?」

そう言ってアイラは背中に向かって叫んだ。気が付くとルシエルが後ろからアイラに抱き付いていたのだ。

「イヤ、なんとなく今の会話聴いてたらカタンにアイラが取られそうな気がしたから、こうやってひっぺかした。」
「とられちゃうって、そんな大袈裟な…」

そう言うカタンに向かって、ルシエルはアイラに抱きついたまま言い返した。

「イヤ、カタンのことだから、用心するに越したことは無い。」
「いやぁ〜…今日は一段と積極的ね、ルシエル?」
「チチチチ、甘いなフェイ。これがオレのアイラに成せる愛の力だよ。」
「下らない事言ってないで離れなさいっ!!フェイも感心してないで助けてよっ!!」

アイラは叫ぶがルシエルは真っ赤になりながらそう言うアイラがかわいくて仕方ないため、一向に離す様子が無い。
おまけに更にワル乗ってアイラの耳元で呟いた。

「クスクス…顔が真っ赤だよアイラ。…アイラ可愛い…」

しかし、ルシエルがそう言った刹那、アイラは驚異的なスピードとパワーでルシエルをぴっぺかし思いっきりぶん殴った。

「あ、愛がイタイよアイラ…アイラの愛がいたい…ナンチャッテ…。」
「そゆ事言うか!?コノッ!コノッ!!」
「ヤ、ヤメッ、アイラ、踏んじゃダメそれは反則だから!か、感じちゃ…じゃなかった、イタイから!!お願いっヤメテ!?な!?良い子だから。イヤ、女王様、イヤ〜ン」
「こ、こらっ!冗談でもそんな気持ち悪いこと言わないでよねっ!!」
「くぅ〜、やっぱり反応が可愛いねぇ〜アイラは。これだからアイラをからかうのはやめられないよ、ハッハッハ。」
「〜〜〜〜〜〜…いい加減にしろぉ〜〜!」

ボコッ!

「あぁ〜れぇ〜〜〜〜〜……」
哀れ、と言うか自業自得の行いの所為でルシエルはぶん殴られて遥か彼方へと飛んで行ってしまった。
事の一部始終を見ていたフェイとカタンは呆れてモノも言えなくなってしまい、『ハハ、ハハハハハ…』と、笑うしかなかった。


食事も一段落つき食後のお茶を飲んでいると、不意にフェイはアイラとカタンに聞いた。

「ところで二人とも、今欲しい物って…ある?」

いきなりの質問にアイラとカタンはキョトンとして目を合せた後フェイを見る。

「どうしたのいきなり?」
「そうだよ、何かあったの?」
「そう言う訳じゃないけど、とにかくっ!二人とも今欲しい物はないかって聴いてるの!」

そう言われて二人は暫く考えた。これを見てフェイはビックリした。カタンはともかくアイラは絶対に即決で『お金』と答えると思っていたからだ。

「ボクは特にないです。」
「やっぱり。(ボソッ)」
「?何か言いました?」
「ううん、なんでもない、なんでもない。で、アイラは?」

分かっていた答えとはいえここまで期待を裏切らないとどうしても一言出てしまう。フェイは手を前でブンブン降りながら言い話しをそらす。
「アタシは………そうね、私も特にないわ。」
「ええ〜〜〜〜っ!!」

アイラの言葉を聴いてフェイは驚いた。考えて悩むだけでも驚きだと言うのに『要らない』とまで言われればフェイは驚かずに入られなかった。

「な…なによ?私そんなに変なこと言った?」
「言った言った。言いまくってるわよ!!……あんた、ホントにアイラ?」
「あんたねぇ、人をなんだと思ってるのよ?精霊王にも言ったの覚えてるでしょ?私は自分で稼ぐのが好きなの人に貰うなんてのは私の趣味じゃないわ。」
「確かにそうだけど…何時聴いてもやっぱりビビるわ…」
「まあまあ、出もホントどうしたんですか?急に‘何が欲しい?’だなんてボク達の誕生日があるわけでもないのに?近々何かありましたっけ?」

そう言うとカタンは色々と考え始めようとしたが、フェイはそれを考えさせない様に『いいのいいの、なんでもない、なんでもない』と言って強引には成しを閉めてしまった。
アイラとカタンの二人は互いに顔を見合わせて‘何がなんだか’と言う表情をしたが話しを突っ込むのもなんなのでこれ以上は言わない事にした。

昼も近くなりアイラの家をおいとましたフェイは、その後何をするでもなく待ちの商店をちらりほらりと覗いていた。
何かあげて喜ばれるものはないかと言う事で始めたウインドショッピングだったが、店をあれこれと覗いているうちに目的は違う方向へと反れていった。

「ああっ!この服可愛いっ!!こっちも悪くないわねぇ…う〜ん、やっぱりどっちもほし〜い。やっぱ人間界に戻ってくる時に向こうから石ころでもくすねて来れば良かったかしらね?向こうの石はこっちじゃ高価になるらしいし…」

どうにも彼女は最近アイラにでも感化されたのだろうか?フラッシュが聴いたらさぞや嘆いた事であろう。
そんな事を考えながら引き続きぶらぶらと歩いていると雑貨屋に足が止まった。
目的は最早‘可愛い小物はないか?’と言う目的にに変わってはいたが品物を眺めるうちにフェイはある品物の前に立ち暫く‘ある物’を眺めていたかと思うと不意に

「これだっ!!」

と叫んで大急ぎで店を出て皆に知らせにと森へ帰って行くのであった。


次の日朝起きたアイラとカタンの家のポストに精霊達からの手紙が届いていた。
内容は前回に茶会を開いたときと同じような内容で、やはり最後には精霊達全員からのサインが署名されていた。

「アイラさ〜ん。」
「カタン、やっぱりアンタんとこにも届いてた?」
「ハイ。と言う事はアイラさんの所にもですよね。」
「うん。」
「勿論行きますよね?」
「しょうがないでしょ。行かないって言っても聴かないんだし。」

結局は行くんだなと思い思わずカタンはクスリと笑ってしまった。

「何笑ってるのよ?」
「アイラさん可愛いなと思って」

アイラはこう言う不意打ちに弱い。ルシエルのように年中言ってくるのであればなんて事は無いがカタンは不意にこう言う台詞を言う。
最近しょっちゅうこう言う事がありそのたびに顔を赤くしてしまう自分を情けないと思いながらアイラは顔を背けてしまう。
(ああ〜もぉなにやってんだか…こんなにあからさまに顔背けちゃったら赤くなってるのバレバレじゃないっ!)
そんな事を考えながらどうやってカタンの方を向こうかと考えていたが、ありがたいことにそのきっかけをくれたのはカタンだった。

「あれ?何でこの辺のバラはもう蕾になっているのに取らないんですか?」

アイラはその蕾に心当たりがあった。そりゃあそうだ。故意に摘んでいないのだから。

「ああ、それはねそれはわざと摘んでないの。今度の休日に使おうと思って…。」
「何に使うんですか?」
「今度の休日に当る日はね…母の…命日なのよ。だからお母さんが創ってくれた花壇のこの花を上げるのが毎年の恒例になってるの。」
「そうだったんですか…」

短く答えるとカタンは暫く考えたのHし思いきってアイラに尋ねてみる事にした。

「あの、アイラさん…」
「何?」
「ボクも行っていいですか?その…お墓参り…。あっ、勿論ダメだって言うのなら行きませんよ。もし良かったらですけど…。」

アイラは一瞬驚いたような顔をしたがすぐに優しく笑いながらカタンに言った。

「別に来ても良いけどつまらないわよ?」
「そんな事無いですよ。ボクも是非お逢いしたいですし。でも、次の休日ってもしかしてお茶会がある日じゃないですか?」
「えっ!?ホントに?あ、ほんとだ。まあ良いわお茶会って夜でしょ?私の用事はお昼に済ませちゃうから」

そう言ってアイラはニワトリとの朝の戦闘を開始しようとニワトリ小屋へ向かおうとした時、違う方向から聴き慣れた声がした。

「ずっる〜い、アタシもアイラの墓参り行く〜〜〜〜っ!!」
「ピアもぉ〜っ!!!」
「何!?アンタ達聴いてたの!!?」

フェイとピアだ。別に聴かれて不味い話しでは無いがまさか聴かれているとは思いもよらなかった。

「たった今『風』達が教えてくれたのっ!!それよりカタンっ!ずっこいよ一人だけ。アタシ達もお墓参りしたいもん。ねぇ〜ピアピアぁ〜?」
「したいしたい。ピアも一緒に緒墓参りする〜」
「ああ〜ウルサイウルサイ、分かったから。じゃあこうしましょ、皆連れて今度の休日正午に霊園に集合。これでいい?」
「りょ〜か〜い。それじゃあ早速皆に知れせてくるね。いこ、ピアピア。」
「フェイちゃん待ってよぉ〜」

いきなり現れたと思ったらもうさってしまった。アイラは軽くぐったりしながら、なんだかなぁ〜と言う表情で見ていた。
カタンの方はと言うと逆にウキウキした様子である。

「なんだか楽しくなりそうですね。」
「アンタ、何トンチンカンな事言ってるのよ。墓参りが楽しくてどーするのよ?」
「でもしんみりするよりはずっと良いじゃないですか。」
「……そりゃあ、まあそうだけど…」

アイラは今まで一人で墓参りをしていたたどうにも大人数での墓参りと言うのが想像できなかったのだ。
とりあえず想像できたのは明日の墓参りはとてつもなくドタバタしそう…と言う事のみだった。

そして次の日、アイラの予想は全く裏切られる事無く当ったのだ。本人としてはこれこそ予想を裏切って欲しい物だったろうが…
静かだったのは精々墓の前について十字を切る時くらいで、思わずアイラは‘これは宴会か?’と思わず突っ込みたくなったくらいだ。
花束一つ添えるにも『あ―でも無いこーでも無い』、何故か持ってきていた弁当を広げれば『このおかずはアタシんだー、いや俺んだー』‘良くここまで騒げるなぁ〜’と言うのがアイラの素直な感想だった。
カタンはと言えばすっかり順応していた。別にドンチャン騒いでいると言うよりは皆と一緒に楽しんでいたと言うのが正しい表現だろう。
そんなカタンを見てアイラは一つ疑問に思う事があった。

「そう言えばアンタの生みの親のメイズさんの墓は何処になるのよ?」
「えっ?」
「だから、メイズさんお墓って何処にあるのよ?」
「あ、うん…メイズさんの墓は、ウチの裏庭に創ったんだ。あの頃は表に出ようとは思わなかったし出たくなかったし、呆然としちゃってたから…。」
「ふ〜ん、で、命日は何時?」
「え、ええーっと…半年くらい先かな。」
「じゃあ次はメイズさんの命日の時もドンチャン騒いでやりましょう」
「アイラ、それナイスアイディアっ!!」

アイラの意見にフェイが賛同するとこぞって他の精霊達も賛同した。どうやらメイズの命日もこれからは大人しく済まないようだ。
皆が墓の前から退散した後、アイラは最後に残って数日前にかいた手紙をそっとその場に置いた。勿論皆にばれないようにそっと……

墓参りも無事(?)終わり夜になった。前回同様フランシスのテーブルを借りてきてお茶会は開かれた。
前回と違う事といえば『開かれた目的』だろうか。

「さて、今回二人をここへ呼んだのは他でもなく茶会を開くためなのだが…」

メリルはここまで言うと一旦言葉を置く。次の瞬間他の精霊達はそれぞれに持ったクラッカーを鳴らした。

『出会いの一周年のありがと〜〜〜っ!!!』

「ああそう言えばっ!」
「ボク達がであったのって丁度一年前でしたっけ?」

二人もようやっと何故茶会が開かれたのか合点要った様だ。そう、もう一年も立つのだ、精霊やカタンと出会って…

「でも、半年前と同じ事をするなんて、あんた達も進歩無いわねぇ。」

ついつい捻くれてアイラは言ってしまったがそれを聞いたアッシュは口の前で人差し指を左右に振りながら言った。

「チッチッチ、甘いぜアイラ。今回は前回とは違う趣向をちゃんと凝らしてるんだからな。」
「へー、どんなよ?そう言えばフラッシュがいないみたいだけど?」
「フラッシュはねぇ…」

続きを言おうとするピアの口を慌ててアッシュは抑えてさえぎる。
そしてピアの耳元で小声で「まだ言っちゃだめだって」と呟きピアが『コクコク』と首を縦に振ったのも見ると両手を放しピアを開放した。
一息ついてアッシュは二人に言う。

「それはもうちょっと待ってからのお楽しみだ。」
「な〜にいっちょ前にもったいぶってんのよ。」
「まあまあアイラ様、先ずはお茶を楽しんで下さいな。折角要れたお茶が美味しくなくなってしまいますわ。」
「そうだぜアイラ。折角こんなに月も君もキレイなんだ。野暮な詮索はなしにしようぜ。」

イルミナとルシエルになだめられてアイラは席についてお茶を頂いた。相変わらずイルミナの淹れたお茶は美味しかった。

暫くするとフラッシュが戻ってきて『準備が出来ました。』と他の精霊達に言った。
その言葉を聴くとおもむろにルシエルは席を立ちカタンとアイラ二人の前に立った。

「OK.それじゃあ本日のメインイベントだ。」
「メインイベントってこれはお茶会がメインじゃなかったんですか?」

カタンに聴かれたルシエルは不敵な笑みを浮かべカタンに言った。

「カタン。さっきアッシュが言ってただろ?『違う趣向を凝らしてある』って。」
「だから、その趣向ってなんなのよ?」
「ふむ、あまりレディを待たせるのも失礼な話しだな。じゃあ、もう言いか。それじゃあこれが俺達からの一年間の世話になった礼を込めてのプレゼントだ。楽しんでくれ。」

そう言ってルシエルは指をパチンッと鳴らした。それを合図としたように遠くの方で『ピューン』と言うなにかが打ち上がる音がし、次の瞬間『パァ―――――ン』と言う音と共に夜空に花火が舞った。
しかも一発では終わらず花火は次々と上がっていく。夜空と言うキャンパスに描かれる綺麗な花達にアイラとカタンはしばし見惚れたのだった。

「ファイヤーワークスね…」
「別の大陸では『花火』とも言うらしいよ。」

アイラが呟きにカタンが口添えをする。その後もまだ花火は夜空を綺麗に染めたのだった………。


「どーだ凄かっただろ!!?」
「うん、ホントに。でも何時の間に準備してたの?」

アッシュに言われてカタンは素直に認める。そして疑問に思っていたことを精霊達に訊ねた。

「ま、その辺は色々あったと言う事で。でも、これをバレない様に色々しかけるのは結構骨が折れましたよ。」
「でも腑にオチないわね…はめるのはともかくはめられるのは好きじゃなわ。」
「まあそう言うでない小娘。まったく、素直じゃないのぉ」
「ウルサイわね羽虫。どーせあんたなんてなにもしてなかったんでしょ!」
「なんじゃと!!」
「なによ!?」









『お父さん、お母さんこの間はうるさかったでしょ?ごめんなさい。
 でもね、あの時いた皆が今の私を支えてくれているんだよ。

 ねぇお母さん、私今とっても幸せ。支えてくれる人が居るってとっても良いことね。それだけで幸せになれるもの。

 それじゃあまた今度手紙書くね

 

アイラより』



後日、送られた生きてはいない方の母親にアイラはこんな手紙を書いたそうだ………


FIN




あとがき

シリアスです。何故かエバーグリーンアベニューではシリアス物しか書けません。何故でしょう?
悠久だとあんなにくっだらない物書けるのに…。
アレか?『これも一種の才能って言うヤツ?』みたいな…。…ってアホかオレは?
まあぶっちゃけてそんな事はどーでも良くてですね。最後に一言。
読んでくださった皆さんありがとです。じゃ、




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