楽し恐ろし学園祭。(前編)



―――……夏休みの学校……―――

季節は夏。時期は8月中旬、只今夏真っ盛である。この時期から少しずつ動き出す連中がいる。『学祭実行委員会』だ。
学祭は11月に行われるが準備と言うのはこの頃から始まっている。こんなに前から準備を始めても本番前は大忙しになるのだから、世の中不思議だ。

さて、今年もその実行委員会に参加した去年の地獄を知る生徒(今年も懲りずに参加)『トリーシャ・フォスター』おもむろに携帯電話を取りだし数人に同じ内容のメールを送った。
内容は以下のようなものである。

『今年も文化祭で『ETERNAL Phantasya』やるよぉ〜ん。参加する人は返事ちょ〜だいね。良い返事待ってるよ〜ん\(^ ^)/』

……数分後

「ルシードさんOK、バーシア先生OK、由羅さんOK、アレフ君OK、シェールOK、……ジンさんOK!」

そう言いながらトリーシャはメンバーをメモ帳にメモし明日からの予定を組み立てるため足早に家へと帰っていった。


―――……その頃メールを受け取ったジンはと言うと……―――

「う〜ん…。今年も勢いで二つ返事で返しちゃったは良いけど……どうしよう…またライ達に怒られる〜〜〜〜。はぁ〜、まあ良いわ。今のうちにメールで謝っとこっと♪」

考えがまとまった所で早速メールでメンバーどもにワビを入れる。
返ってきた返事は、案の定後で叱られる事の予想できる内容ではあったがそれでも一応こうなる事は予想はしていたらしい。
ありがたいメンバー達である。

「う〜ん…ここまで容認されちゃうと、頑張らないわけには行かないわねっ!!さぁ〜って明日から頑張りますかっ!!」

そう言うとジンは意気揚揚と家へ向かって歩いて行った。


―――……9月2日二学期始業式……―――

高等部までの生徒は今日から登校である。大学部の生徒は後2、3週間は学校へ来ない。
来ている大学生と言えば近くまで迫っている体育祭関係者、サークルをやりに来ているもの、そして学祭関係者程度である。
因みにジン&ジョートは体育祭には参加していない。理由は勿論二人揃って『メンド臭い』だ。

曰くジョート、『1銭にもならんことを何故せにゃあならん。』
曰くジン、『ええ〜、だって、そんな事したってしょうがないじゃない?アタシが今やりたい事じゃないもの。』

ポジティブではない答えだが実際の所、参加フリーの大学部の生徒は5割弱が参加をしていない。
体育会系サークルに入っている連中には体育祭命なのだろうが、そうでない生徒たちにとってはどーでも良い物なのである。
話しを元に戻すがジンは今日朝から学校に来ていた。午後から音楽室で『ETERNAL Phantasya』の練習があるからである。
練習と言っても高等部の子達のHRが終わるのを待たねばいけなかったから昼までは暇だった。
何故早く来たかと言うと、音楽室の機材チェック―――アンプ、キャビは必要か等の備品チェック等がメイン―――のためだったが、どうやら中にはトリーシャがいないと入れないらしく、仕方なく戻ってきたのだ。

そんな訳でする事も無く食堂でボーッとしていようかと考えながらジンはそこら中を眺めていた。
学園内にはポツリポツリと体育祭の催し物に紛れて学園祭での催し物の一部の参加者募集が募集されている。
やはり今の時期は体育祭がメインであるらしい…『そりゃあそうね』と思いながらまたジンはボーっとしながらテケテケと歩いて行った。

「良いわねぇ〜若いって、あたしもなんか参加しようかしら……ん!?」

『ん!?』と言って立ち止まったジンの前には大きなベニヤを三枚ほど使った看板が立っていてそこにはこう書かれていた……

『ミスコン参加者募集っ!!
 集え若人よ! 己の美しさを見せつけろっ!!』

と言う訳の分からない振れこみと共に描かれている怪しい絵……ジンは暫くこの看板を見て考え込んだかと思うと恐ろしいほど不気味な笑みで『ニタァ〜』と笑い

「フフ…フフフフフ……お―――――ほっほっほっほっほっ!!」

と声高らか(?)に笑いながら実行委員会本部へと向かっていった。その姿を見ていた小学部の低学年の生徒たちは泣き出したと言う。
泣き出した子供達が言うには『恐いのが歩いてったぁ〜』と言う事らしい。まあなんと迷惑な話しだろうか…。


―――……音楽室前……―――

午後になり一同に会しジンを見たバーシアを除く5人は引きまくっていた。因みにそのバーシアは職員会議である。
本人はバックレようと試みたのだが、リカルドに見つかってしまいそのまま強制参加させられてしまったらしい。
この辺りの行動、教師と言うよか生徒である。

「……ジ、ジャン…どうしたいつも以上にに不気味な面して…」
「このメンバー内でジャン言ってっと犯すわよ、ルシードちゃあ〜ん…」

緩みっぱなしで不気味極まりない顔で言われると実際にやりかねないような気がしてルシードは一瞬本気で学園から逃げだそうかと考えた。

するとジンの顔はキリッと引き締まって

「大体…」

顔が緩む…

「アタシ顔の一体何処が…」

更に緩む…

「緩んでるって…」

最後には完全に崩れた。

「言うのよぉ〜…」
「その面だその面。」
「へっ?」
「ま、まあ深く首突っ込むのも後々恐そうだからとりあえず練習始めちゃおうよ。」
「まあ、後々恐そうだなんて、トリーシャちゃんも失礼ねぇ〜。アタシは今サイッコーに楽しい玩具で楽しい遊びを考えて想像しているのに…」
「一体何で遊ぼうって言うのよ?」

由羅に聞かれたジンは‘くるうり’と首を由羅の方へ向け『ナイショ。』と一言言った。
そう言われてしまうと最早誰も聞けなくなってしまった。これ以上関わると自分が危ないと判断したためである。
しかし、音楽室へ入りひとたび機材のチェック必要or不必要を分ける段階になるとジンはきっちりと仕事をこなした。
所が、いざ練習に入る段階でちょっとした問題が起こった。

「………ベースが居ない……」
「ついでに言えばキーボの子も来て無いわよ。」

ジンはバーシアをおおよそ教師扱いしない。本人も去年からの事で気にしてはいないがそれにしても教師を「子」扱いする辺り相当遠慮がない…。

「アイツは職員会議だから仕方ねぇ…ってしかしこう言う時に限って何もリカルドに見つかることねぇだろーに…」
「ボクのお父さんが…ゴメン。」
「トリーシャが気にすることじゃねえが…やっぱりベース居ないとヤか?」
「アタシとしてはね…。まあ別にキーボードでも十分にベースは賄えるけど、ベースって去年も居なかったじゃない?だから今年はいてもいいんじゃないかと思う訳よ。」
「まあ、それは分からなくはないが…でもいないものをゴチャゴチャ言っても仕方ねえだろ。」

そこまで言われて納得したかジンは暫くは下を向いていたが、手を顎に当ててウンウン唸っていた。そして…

「………う〜ん…いっそのことアタシがベースやっちゃおうかしら?」

と言い出した。当然いきなりの事にルシードやトリーシャは反対した。

「ジン、おまえとうとう頭イカレたか?ギターのおまえがベースやってどうすんだよっ!?」
「そうだよっ!ジンさんとボクでツインギターやってって言うのが今年のボクの楽しみだったのにっ!そんなことしたらボクの野望が一つ潰えちゃうじゃないかっ!」
「チョット待ったトリーシャっ、その『野望の一つ』って言う事は他にも野望があるのか?」

ボーカルな上ジンの事をあまり良く知っていなかったアレフは別の事に突っ込みを入れる。突っ込まれたトリーシャはしどろもどろになりながら答える。

「う、うん…」
「で、その野望って言うのは?」
「ええ〜っと…『ジンさんとツインギターでプレイする』『実行委員会に入って毎年自分のバンドの都合の良いように内部をコントロールする』等々…」
「ま…まだあるのか?」

いい加減ルシードも呆れる。

「だってぇ〜折角の学園祭なんだよ!?楽しまなきゃ損じないか。」
「そ〜そ〜。だから、あたしも楽しみたいから今回はベースを弾くのよぉ〜ん。」
「それはダメだよ〜。ジンさんはギター弾くのっ!!」
「イ〜〜〜〜ヤッ。今回はもう決めた。あたしベース弾くっ!!」
「そんなぁ〜。」

がっくりとうなだれるトリーシャにルシードは肩に手を乗せ同情した。

「諦めろ、コイツは一度言い出したらそう簡単には自分の考えを捻じ曲げないからな。」
「そうなの?」

今まであまりしゃべっていなかったシェールがルシードに尋ねる。

「ああ、コイツ以外に頑固だからな。それに小汚いし、意地汚いし、目的のためなら手段を選ばないしオカマだし…」
「ルシードちゃん。それ以上言ってるとガキの頃からの恥をこの場で全部ぶちまけるわよ?」
「テメッ、きたねぇぞ!?」
「なんとでもお言い。それに、あたしは意地汚いし目的のためなら手段を選ばないんでしょ?だったらどんな手を使ってでもルシードちゃんを弄くり倒すわよ?」
「ぐぬぬぬぬぬぬ……殴りたい…」
「そう言えばジンくんって、ルシードくんと長いの?」
「う〜ん…長いような短いようなって感じかしらね?」

由羅に聞かれてジンは素直に答え、話しを続ける。

「ガキの頃あたしんチと、ゼファーくんチ、後ルシードちゃんチってご近所さんだったのよね。で、ナゼか知らないけど何時の間にやら仲良くなってたってワケ。…人生って不思議よねぇ…。」
「おかげで俺は散々な目にあったけどな………」

思い出すのもイヤと言った風にルシードは語る。相当イヤ〜な事だったのだろう。
ワル乗ってフォローもしないゼファーの姿と一緒になってルシードがどう言う幼児期を過ごしたか、容易に想像ついた。

「ちっちゃぁ〜い頃は摺れてなくって可愛かったあのルシードちゃんが、こんなんになっちゃってねぇ…おねぇさん悲しいわぁ…。」
「るっさい!黙れっ!!……ああっ、ヤな物思い出した…で、おまえベースはどうするんだ?」
「そんなもん決まってるじゃない?借りるわよ。」
「借りるって誰に?」
「そりゃあ知り合いに決まってるでしょ。」
「良かったな、知り合いなんて立派なもんがいて。」
「ほ〜ほほのほ〜だ、あたしはルシードちゃんと違って人徳があるから伝手はいくらでもあるのよぉ〜ん」

嫌味のつもりで言ったルシードのセリフだったがジンには全く答えていなかったらしくアッサリと返されてしまった。

そんなこんなでこの日は結局機材チェックとミーティングのみで終わった。
因みにこの日のミーティングで決まった事は、各人のパート、セットリスト、練習日程だった。
練習場所に関してはここ『音楽室』が使える事になった。トリーシャが自分のために都合を強引につけたらしい…。
さすが学祭を操ろうとする女である。

そして、メンバーパートは以下の通り
VO.……ルシード・アトレー、アレフ・コールソン、シェール・アーキス
GU.……トリーシャ・フォスター
BA.……ジン
KEY……橘由羅
DR.……バーシア・デュセル

セットリストは
『そばかす』……(ジュディーアンドマリー)
〜MC〜
『唇』……(グレイ)
『風に消えないで』……(ラルクアンシエル)
『春 〜SPRING〜』……(ヒステリックブルー)
〜MC〜
『Smooth Criminal』……(マイケルジャクソン)
『マリオネット』……(ボウイ)
〜MC〜
『学園天国』……(フィンガーファイヴ)

と言う風になった。
意見については当初マニアックな曲が多々あったが全部ジンによって却下された。その時のジンは顔を青くしながらこう語っていた。

「アンタ達……客が全く盛りあがらないライヴってどんなのか知ってる…?それはそれは恐ろしいものなのよ…。ハコの中には客はほぼゼロ、人が居ないから演奏していても誰もノってこない、メンバーよりも客のほうが少なくて空しさ一杯になるのよ…。おまけに収入がないからバンドが大赤字になって、バイトや勤め先だけじゃ金が間に合わなくなって生活が出来なくなるからコンビニのATMに走るの………」

「でも、前にやるバンドさんとかも居るわけだし…」

「あまいっ!甘いわよトリーシャちゃん……。客なんてのはね、ライヴがつまらないと皆そそくさとどっか言っちゃうのよ!!今回の場合はなまじメンバーが言いから、廊下ですれ違った生徒たちにこう言われるのよ?『ライヴはつまらなかったけど○○さんは最高でしたっ!』な〜んて屈託の無い顔で!!…そんなライヴ…したい?」

一同は首をブンブンと横に振った。バンドをやっている人間が言うセリフだけに恐ろしいほどのリアリティがある。
ジン達もこんな状態に陥った事があるのだろう…。

そんな訳で、ライヴでやって盛りあがることの出来る、皆の知っている歌を出来るだけ選曲した。
アレンジ及び、譜面に起こす作業はは全部ジンに一任されてしまった。
これについても半分仕方が無く、『譜面に起こせるのがジンだけだから』と言う理由だった。
セットリストが組み終わった後、後から駆け付けたバーシアはフとした疑問をジンに問い掛けた。

「ところで、学園天国はまあ納得出来るとして、なんでマイケルジャクソンの曲なんてカバーするのよ?」

聞かれたジンは一瞬ドキッとしたが、いたって冷静を振舞うように言った。

「ドキッ、えっ!?それは…ええっと〜……そうっ、あれよあれっ!ハイティーン狙いよ。見に来てるおじちゃまおばちゃまをターゲットに入れるためよ!」
「ねえジンさん。今の‘ドキッ’って言うのは何?」

今度はシェールに問い詰められジンはドアの方へと一歩あとずさみながら目をそらして答えた。

「ホ…ホホ……ホホホホホ〜っ!!そんな事は気にしちゃあいけないのよ若人っ!誰もが知っているが聞いた事がなかろうマイケルジャクソンの曲をあたし達がやって温故知新を聴いてくれている生徒たちに想い知らせてやるのよっ!!!」
「あやしぃ〜なぁ…ホントはジンさん自分がやりたかっただけじゃないの?」

びくびくぅ〜〜〜っ!!

「ぴぃ〜んぽ〜ん、あったりぃ〜、でも、楽譜に落とす作業するのはアタシだから一曲ぐらいあたしのやりたいものやらせてね、じゃ、そゆ事で、バイナラ、ナライバ。」

あからさまなうろたえを見せて、ジンはやっぱり後ずさみながら捨て台詞を吐いて帰ってしまったジンだったがすぐに、ひょっこりと顔だけが教室から現れて一言付け足した。

「それとアレね、このバンドの事は本番まで誰にも教えちゃあダメよ?楽しみがなくなっちゃうから。それでは皆さん、サイナラ、サイナラ…サイ〜ナラ。」

後に残されたメンバーはリアクションに困ってただただボーゼンと立ちつくしていた。

「ジンくんの帰り際のセリフ……随分とネタが古かったわね…」
「あの子一体いくつよ……?」

由羅とバーシアのセリフでアレフはフと気がついてルシードに訊ねた。

「おいルシード、おまえジンがいくつだか知ってるんだろ?教えろよ。」
「ぜってぇイヤだ。」
「なんでだよ?」
「アイツが言おうとしない事を俺が軽軽しく言ってみろ、後で何されるかわからねぇ…」

顔を青くしながらルシードはアレフに答える。アレフは『なるほど』と納得しながらも、

「おまえの後々なんて知ったことかよっ!コノヤロー喋りやがれっ!!」

と、ルシードの首をロックしてグリグリとしながら言った。

「イテェっつーの、この、馬鹿アレフっ!放しやがれ!!」

ルシードは喚いたが勿論アレフは放すわけも無く回りの連中はワル乗ってきている。

「アレフ君やっちゃえやっちゃえ〜」
「そうよルシードっ!しゃべんなさい。教師命令よっ!?」

由羅とバーシアはアレフの回りでワイワイ野次を入れていた。

「あっ、てめぇバーシア!!こんな時だけ教師ずらすんじゃねぇ!!」
「ふふ〜ん、なんとでもお言い腐ってもアタシは教師なんだからねッ!」
「イヤ…バーシア先生…自分で『腐っても』なんて言わない方が…」
「一応自覚はあったんですね…。ボク、無いもんだと思ってたよ。」
「アタシも…。」

と、トリーシャとシェールは一歩下がった所で見ていた。


―――……只今練習中……―――

「チョット休憩取りましょうか…。」

ジンのその一言で一同はぐったりと地べたに腰を下した。ここは音楽室。
今現在ジン、トリーシャ、シェール、バーシア、由羅の四人はここで練習中である。因みに今日はルシードとアレフは用事があるため不参加である。

「去年もやったけどやっぱ一年ブランクがあると鈍るわ。」
「一年もサボってたのっ!?」
「サボってたんじゃ無いわよ。やらなくなったの。あたしゃこれでも普段は教師なのよ。早々ドラムなんて体力の要るものやってられるかっつーの。」
「ふ〜ん…そうなのシェールちゃん?」
「イヤ、アタシに振られても…でも、バーシア先生普段から授業ボイコットしてるじゃない。」
「ボイコットじゃないわよ!生徒の自主性を重んじていると言ってちょうだい。」
「物は言いようね。」
「るっちゃい」

由羅のツッコミにバーシアは立場を無くしてしまい外へと出ていった。大方煙草でも吸いにいったのだろう。

「アタシもヤニって来ようかなっと。」

バーシアが何をしようとしているかの予想のついたジンは、そう言ってババ臭く(?)『よっこらせっと』と言いながら音楽室の出口へと向かった。
そして、ドア前でピタリと止まり、くるりと後ろを向いて言った。

「トリーシャちゃんシェールちゃんはもっと人の音を聞かなきゃダメよ?そうしないとどんどん走って言っちゃうから。由羅ちゃんはリズムね、今のままじゃ音がボヘェ〜ってなっちゃうから、気をつけてね?」
「……ジンくんってなんだかんだ言ってバンドマンなのね…」
「そうだね…」

ジンの去った部屋で由羅が呟きトリーシャとシェールは只只頷くばかりだった。
因みに美華猫内で楽譜が読めるのはジン、上手ギターの雷華、ドラムの眞倖の三人である。ジョートとベースの琴音は読めない。
そして実際の所、音合わせの時点でのアレンジ等、個人指導の殆どはジンが行っていた。
そのため一切の手抜きは許されず全力でやらないと、ジンにベッコベコに言われる事となった。

しかし、一旦練習が終わってしまうとジンは何時も通りにれシードやアレフをからかって遊んでいた。
最初はそのギャップに戸惑っていたメンバーも時がたつに連れ慣れていった。

練習は基本的に円形の形をとっていた。全員が全員の顔を見られるようにしたためである。
こうする事によって相手のしようとしていることも分かる。自分についてもまた然り。と、言う訳でこの立ち位置はスタジオ練習での理想的な形だった。


―――……そして明日はいよいよ……―――

…本番である。ライヴでのアレンジも形となり、後は本人たちの実力のみぞ知ると言う所か。
その本番前日、剣道部主将、八尾月シュウはカレンダーの日付に×印をつけ呟いた。

「明日はいよいよ高等部最後の学園祭……絶対にトリーシャと想い出をつくっちゃるっ!!」

同時刻、ジンは明日の準備をしながら呟いた。

「明日はミスコン当日…ぜぇ〜〜〜てェシュウちゃんに新しいトラウマ創っちゃる…クックック……」

ジンが呟いた瞬間シュウの背中に悪寒が走り『なにかヤな予感がする…』と…その不安は彼の睡眠を随分長い間、妨げたのだった…。


―――……そして当日……―――

そして本番当日、リハも終わり、一旦自由行動をとる事になった。
リハーサルは出演する順番と逆から始める逆リハで行われたため、ラストでやるジン達は一番最初にリハが始まりそれから一つ二つ前のバンドが始まるまで暇なのだ。

ジンはトリーシャと一緒に学園祭開催本部まで行きある人物を待った。ある人物とは勿論シュウである……

「なんでジンさんがここにいるんですかっ!?」

ビックリを通り越して顔を青くしながら喋っているシュウを、さも当然と言わんばかりに満面の笑顔でジンは答えた。

「そりゃあシュウちゃんと遊ぶために決まってるでしょ?」
「そーじゃなくて、なんで俺がここに来るって言う事が分かったんですか!!?」
「そりゃあ簡単よ。シュウちゃんは絶対トリーシャちゃんに会いに来るでしょ?でも普通に探したんじゃ絶対に会えないから、先ずはここから探しにくるはずだもの。だからここで待ってたの。勿論途中でトリーシャちゃんとバッタリって言うのは不味かったからトリーシャちゃんと一緒に来る事でそれを回避して、今後のトリーシャんちゃんの行動もバッチリ聞いておいたわよ。」
「ア〜タ、なぁ〜に確信犯めいた事して人を待ち伏せしてんスか?」
「まあまあそんな事は気にしなぁ〜いのっ!!それよりシュウちゃんさっさと目的地に行くわよ。そうでなくとも時間があまりないんだから。」
「ちょ、チョット待ってくださいよジンさん、行くって、何処行くんですか?」

ズルズルと引っ張られていくシュウは慌ててブレーキをかけ目的地を訊ねた。勿論ジンがその質問に答えるはずはなく

「それは着いてからのお楽しみ。あ、それから言っておくけど、トリーシャちゃんは今日はもうここには戻ってこないみたいよ。」

とかわされてしまった。トリーシャがここに来ることはないといわれ、シュウは観念し、

「分かりましたから、だから引っ張らないで下さいよぉ〜。」

と嘆くがジンは一向に聞かずそのままず〜るず〜ると引っ張っていった。





あとがき

出来ました……前半です。………そうっ!前半なのですっ!!
事細かに書きすぎた…さて、ミスコンでクソオカマは何をやろうとしているのか!?
学祭のバンドイベントは無事成功するのか?そして学祭の運命やいかにっ!!?

こんな事書いてますが、実際大した事はおきません。あしからず。
ではまた〜





SS置き場

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送