お正月だよ悠久組曲!



お正月…それは新しい年の初めを祝う国民の休日……。
お正月…それは1日〜7日までを示し、7日には『七草粥』を食べ1年の健康を祈る……。
お正月…それはネタを書くには事欠かない行事の数々がある夢のような日々(?)……。
今、貴方は悠久学園の関係者達が起こした数々の伝説(?)の証人となる………(大げさ)

―――1月1日―――

「あっ、ゼファーさん、明けましておめでとうございますぅ〜」
「ティセか、ああ、明けましておめでとう。ティセ、あまり急ぐと転ぶぞ。」

神社にて悠久学園教師を発見したティセはトテトテとゼファーに近づく。
声をかけられたゼファーの方はティセのドジっぷりを知る人間の一人である。と言うか、悠久学園において彼女のドジっぷりはあまりにも有名だった。

曰く、『何も無いところで転ぶ』。
曰く、『料理を運ばせれば必ずぶちまける』。
曰く、『それ以前に料理事に関わらせると大変な事になるらしい』
曰く、『子犬に吠えられていた所を助けたルシードは何故かご主人様らしい』。
曰く、『と言う事はご主人様のルシードは実はメイドフェチかっ!?』etc.etc.……

最後のほうは本人には関係ない…そして本人には失礼極まりない、だがビミョーに間違ってもいないため、それを面と向かって「おまえ失礼だぞっ」と誰も言えないと言う、ある意味凄い少女だ。
そんな数々の伝説を作り生きた伝説になりかけている彼女だ、ここで彼女が転ぶのは彼女を知る人なら誰でも思う事である。

「大丈夫で…あうっ。……はりゃ?」
「やはりな、だから気をつけろと言ったろう?」
「ゼファー先生ありがとうございます。」

現に彼女はやっぱり周囲の期待を裏切らずにモノの見事にすっ転びかけた。ただ、コケかけただけで今回は転んではいない。
ゼファーが転ぶ前のティセを支える事でそれを回避したのだ。
ゼファーに支えられたままの体制で笑顔で礼を言うティセをちゃんと立たせ、ゼファーは一言『ウム』と答えた。

「ところでゼファー先生。」
「なんだ?」
「お年玉下さいっ!」
「お年玉とは…唐突にどうした?」
「ハイ。朝から会う人達が『お年玉』と言う言葉を聴くのでティセも欲しくなりました。」
「そうか………それでは俺が特別にティセにお年玉をやろう。」
「本当ですか!?」
「ああ、本当だ。」
「わ〜いですぅ。」

そう言って喜ぶティセを見ながらゼファーは近くの出店へと行き、100円程度で買えるであろうビニールボールを買ってきてティセの前に立つ。
そしてそのボールを前に差し出し、おもむろにボールを下へと落とした。

「ティセ、これが『お年玉』だ。」
「ほえぇ〜、これが『お年玉』ですか…。」

珍しそうにその光景を見ていたティセにゼファーは嘘知識を振りまく。

「そうだ。お年玉とは、こうやって『年の初めに玉を落とす事によって厄も一緒に落とす』と言う所からきたものなのだ。」
「そうなんですか。ティセはまた一つおりこうになりました。ゼファー先生ありがとうございます。」
「礼には及ばん。ところでティセ。」
「ハイなんでしょう?」
「今日はルシードも一緒か?」
「ハイ。ご主人様もフローネさんも一緒です。」
「そうか…。ティセ、お年玉は俺からではなくルシードから教わったと言う事にしておいてくれ。」
「……?どーしてですか?」
「俺よりルシードに教わったと言う方がルシードも嬉しかろう?」
「……ハイッ!じゃあティセお年玉はご主人様から教わった事にしますぅ〜。」
「そうか、それでは俺はそろそろ行かねばならん。ティセ、今年もがんばるんだぞ。」
「ハイですぅ〜。」

そそくさと去っていくゼファーを見送ったティセは、その後ルシード達の元へと合流しゼファーから教わった『お年玉』の話しをルシードから教わった物として大きな声で嬉しそうに話した。
おかげでルシードは、一年の初めから要らぬ誤解で回りの見ず知らずの人達にまで冷たい目で見られるのだった。

しかし嬉しそうに話しているティセを責めるわけにも行かず結局後からゼファーに教わったのだと知ったルシードは、ゼファーに年賀状ではなく不幸の手紙を送り付けたと言う。


―――1月2日―――

ここは学園の事務員カッセル・ジークフリード(年齢不詳)さんのお宅。
彼は大好きな演歌を聞きながらとなりでガミガミと説教とたれる同じく学園の医務、トーヤ・クラウドの話しを無視しながら雑煮を食べていた。
因みに何故か学園の生徒ディアーナ・レイニーも同席していた。本人曰く「アタシは先生の助手ですからっ!」と言う事らしい。

「だからじーさんっ!じーさんはもう年なんだから健康診断を受けろと言っているんだっ!」
「ふんっ、若僧が偉そうに何を言う。自分の体の事くらい自分で分かるわい。」

演歌テレビ番組を見ながら雑煮をすすり相変わらずの調子でカッセルはぼやく。
回りから言わせれば『トーヤが若僧なのではなくアンタが年をとりすぎてんだっ!』と突っ込んでいるところだがこの場にそう言う突込みをする茶目っ気ある人間はいない。

「そんな事言って、いざと言う時はどうするんですか?」

さっきからこの調子である。こんな状態が朝から続いている。因みに今は昼だ。
おまけに、とうとうディアーナにまで眉間にしわを寄せて迫られカッセルは仕方なく、トーヤ達の申し出を受け入れる。

「分かった分かった。おまえさん等のしつこさには参ったわい。だがせめてこの雑煮くらいはゆっくり食わせい。覚めてしまっては不味いからのう」
「それはそうだな。まあ雑煮くらいはゆっくり食ってくれ。」

やれやれ、やっとゆっくり飯が食べられるわい… そんな事を呟きながら雑煮の餅を口に含んで飲みこんだ途端カッセルの様子が急変した。

「も…もひが…(訳:も…餅が…)」
「じーさんどうしたっ!!」
「も…もひが…」
「詰まったのか!?おいっディアーナっ!!」
「ハ、ハイッ!!」
「急いで掃除機を持って来いっ!のどに突っ込んで吸い出す!!」
「分かりましたっ!!」

そう言ってディアーナは大急ぎで掃除機を探し出す。その間にもカッセルの顔はどんどん赤くなる。青くなる前に吸い出さねばとトーヤも気持ちが焦る。
こういう時は気持ちを落ちつかせねばならないと深呼吸をしていったん落ちつく。

「じーさん、おいっ、しっかりしろっ!!」
「も…もひが……」

右手を前に出しプルプルと振るわせながらカッセルがうめく。トーヤはいまだ掃除機を持ってこないディアーナを急かした。

「ディアーナっ!掃除機はまだかっ!!」
「ありましたっ!今もって行きます!!」
「じーさん、もう少しだからな」
「もひが………もひが…………」
真っ赤になっているカッセルを見ながらトーヤを励ます。そこへ全速力で掃除機を持ってきたディアーナがかけつけた。

「先生っ!掃除機ですっ!!」
「よしっ!急いでコンセントをつなぐんだ!」
「分かりましたっ!」

ドタバタとする中カッセルは未だにうめいていたカッセルに変化が現れた。

「もひが…………………うんまい…」

ドタドタッ……
コケた。盛大にコケた。勿論トーヤとディアーナがである。カッセルの方はと言うと満面の笑みで美味なる餅を腹に収め、心底嬉しそうだ。
そしてズッコケているトーヤとディアーナを見て‘?’マークをぶつける。

「どうしたんじゃ、二人とも?」
「じーさんノドに餅が詰まっていたんじゃあないのか!!?」

怒鳴り散らすトーヤにカッセルは首を横に振りながらやはり万面の笑みで

「誰がそんなドジを踏むか、餅が美味かっただけじゃ。」

と言った。トーヤの横ではディアーナが「………先生ぇ〜」と涙目で訴えている。
その目はこう語っていた。『私達の慌てようは一体なんだったのでしょう?』と……。
訴えられたトーヤはその眼差しを無視して一人殺意を満面に振り撒いていたと言う…
その場にもし違う誰かがいたら、きっとこう思った事だろう『医者が殺意沸かしてどーする?』と、もしくは違う人はこう言ったかもしれない『ドクターあんたの気持ち分かるよ。一緒に河原の土手にじーさん埋めようぜ。』と……
さて、貴方はどう思ったことだろうか。


―――1月4日―――

ここは某大型デパート。年末に続いてこう言う時にあるのが女性大好き『バーゲン』である。
因みに某家に届いた新聞のチラシにはこうかかれていた。

『○○デパート本日より全品25%OFF!!更に値引き商品多々ありッ!!!』

これを見た某家の少女こと『トリーシャ・フォスター』は父『リカルド・フォスター』を鳩尾に肘を叩き込む事で無理矢理起こし、金をせびって意気揚揚とデパートに向かったと言う…。
残されたリカルドは学校で見せる威厳さもなく、涙を流しながら朝もはよから「親子電話相談室」に電話をかけたと言う事だった…。

さて、デパートについたトリーシャは早速お目当ての洋服売り場へと直行する。
そこにはすでに人だかりがあり『戦場』と言うのが相応しい有り様になっている。
『チョット押さないでよっ!』『それアタシのものよッ!』『あんた、手ぇ話しなさいよっ!!』『うっさいわねブスッあんたこそ引っ込んでなさい!!』
そこはやはり、世の男性諸君はその場へは絶対に近づけない女性の聖域(?)であった。

「よぉ〜しっ!!ボクもいっちょ戦利品を獲得しに行くかな!?」

血がたぎって仕方が無いらしいトリーシャは腕を捲くりブンブンと腕を振りまわしながら戦場へと向かって行った。
人並みを掻き分けて品物(トリーシャ通称『宝の山』)のもとに辿りつくとあるわあるわ宝の山、普段なら絶対にてのだせないものの数々がそこにお手頃価格でゴロゴロと置いてあった。
トリーシャは目を輝かせながらやれ服やらなんやらをもぎ取っていく。フと見るとワゴンの中に自分の求めていた物を見つけた。
「あれ?これこの間出たブランド物の化粧品じゃん。そ〜かぁ化粧品も置いてあるんだ。ま、いっかボクが興味あるのは服だけだし。」

そう言ってトリーシャは再び服に目を移……そうとしたら、とある人を見つけた。髪形は違うが、そのデカイタッパはかがんでいてもよく分かる。
……アルベルトだ。何時ものツンツン頭は下してストレートになっている。思わずトリーシャは声を上げてしまった。

「ア、アルベルとさんっ!!」
「えっ?ト、トリーシャちゃん!?」
「なんでここに…って、化粧品目当てか…。でもこの事クレアさんは知ってるの?」
「えっ!?そりゃあ知ってる訳………ないじゃん………。」
「そうなんだ……」

そう言いながらトリーシャは‘にたり’と笑った。その笑みはこう語っていた『カモ発見…』と……。

「アルベルトさん」
「ト、トリーシャちゃん、顔が…恐い。」
「えっ、そんな失礼だなぁ〜。第一、そんなこと言ってると…ボク……口がついつい軽くなってクレアさんに言っちゃうかもよ?」

その時アルベルトには確かに見えたと言う。トリーシャの尾骨の辺りから先の尖ったしっぽのような物と、耳の近くまで裂ける口。
そしてデビ○マンのような翼まで生えていた……と。

「そ、それだけは勘弁してぇ〜。」
「それじゃあ後でご飯奢ってくれるよ……ね?」
「…ハイ。でも、その代わりちゃんとこの事はクレアには黙っていてくれよ。」
「分かってるって。」

そんな訳で、バーゲンでゲットした品物を両手にぶら下げ、アルベルとに飯を奢らせたトリーシャはホクホク顔で太陽傾く夕焼けの中家路につくのだった。

「あ、いっけない。ついでに夕飯の買い物してくるの忘れてたっ!」

夕飯の事をすっかりと忘れていたトリーシャは家にたどり着くと、荷物を玄関に置いたまま近くの商店街まで行き夕飯の買い物を済ませるのだった。

その頃近くの河原では、リカルドが体育座りをしながら丸まって小石を川に力なく投げ、アルベルとは遠くへ向かって叫んでいたそうな。


―――1月7日―――

この日は『七草粥を食べて一年の健康を祈る』日である。そんな事を学校で聞いたマリアは『簡単そうだから』と言う理由で作ってみようと試みることにした。

「ところで、七草って草を適当に集めれば良いのよねっ☆」

そんな訳で『悠久学園トラブルメーカー』が一人、『マリア・ショート』は本人の無意識下において今日も伝説的(?)なトラブルを起こすのだった…。

さて、今マリアは彼女を溺愛する父親に七草粥なる物を食べさせようと草がいっぱい生えている河原へと来ている。

「さて…と、それじゃあ材料を探しますか☆」

そう言うと彼女はおもむろにその辺に生えている草を引っこ抜いては、じ〜っと見てポイッと捨て、引っこ抜いては、じ〜っと見てポイッと捨ててを繰り返していた。
暫くその作業を繰り返していたマリアは不意にぴたっと止まって目を輝かせながら言った。

「これにしようっ!!」

『見た目が使えそう』七草の種類を全部…と言うか一つも知らないマリアはそんな事を言いながらまた一つ、また一つ、と確実に間違った方向へと歩んでいくのだった。

無事(?)に七草を発見したマリアは家へ帰り早速料理の準備を始める。
なんと言ってもマリアは金持ち所の(一応)令嬢である。家のキッチンには立派な調理品がずらりと並んでいる。
早速マリアは鍋を引っ張りだし米を中に入れ水を入れ火を強火でかけた。勿論米は洗っていない。理由は以下の4つ。

『水が冷たい☆』
『洗うのが面倒臭い☆』
『そんな事しなくったってマリアの作る料理が不味いはずが無い☆』
『愛があれば大丈夫☆』

暫くしても水は沸騰しない。比較的小さい鍋を使ったが、それでもいっぱいに水を入れているのだ。早々沸騰するはずが無い。
そんな訳でマリアは何を思ったかいきなり鍋の中の水を半分近く捨てた。

「ふぅ〜、多分これできっとすぐに沸騰するでしょ。☆」

そう言いながらマリアは、額のかいてもいない汗を拭いながら爽やかに言った。

以下その日書かれたマリアの日記より抜粋。

『暫くしてようやっと鍋のなかの図が沸騰。さっき拾ってきた7種類の草を入れて、蓋をした。

 数分後鍋の蓋の周りからブクブクと泡を吹き出しながら水が漏れ出したので急いで日を弱火にする。
 一応ぐつぐつと言いながらも回りから水が漏れ出す事はないので安心して部屋からマンガを持ってきて読書。この間一時間が経過する。

 そろそろ良いでしょ、と思い、一端火を止めて味見をする。塩味が足りない。と言う訳で、大さじスプーンにごっそりと塩を汲んで鍋の中に入れる。
 そしてまた味見。今度は塩辛い。と言う訳で今度は塩を入れる事にする。
 少々微妙な味だがこれが七草粥の味だろうと納得する。また鍋に蓋をする。

 数分後。もういい加減飽きた。と言う訳で中を見る……どうもお粥っぽく無い。とりあえずお湯を捨てて適量に。
 最後に七味と卵を落とすことにする。卵は美味く割れなかったが致し方ない。チョット殻のような物が見えるけど見ない事にしよう。』

……………これを食べたモーリス・ショート氏が不味かったのを我慢し次の日の業務を全て休む事になったのは一部の物しか知らない事である。
次の日から『マリアを調理場に立たせるな』と言う指示が使用人全てに言い渡された。勿論マリアには秘密にして、である。

こうして悠久学園生徒及び教師達の正月は終わった。来年はどのような正月になるのであろう。
まあ一年後の事はさて置き、今年一年もやはりこの学園は平穏と言う2文字とは縁遠そうである。
そんなこんなで今日も1日は過ぎて行くのだった………


おしまい。




あとがき

出来ました。ようやっとです。
リクエストを頂いてから随分と立ってしまいましたが書いている現在春休みが始まっているので時間的には余裕があるため大急ぎで創りました。
まあ今回も‘こんな感じでなかろうか’程度に思っていただければ光栄ですが、ネタ的に気に入っている作品ではあります。
お年玉の嘘知識とか、ジジイの『餅美味い』ネタとか、(小)悪魔なトリーシャとか、マリアの大雑把お料理教室とか…。
まあ自己満で申し訳無いですが許したって下さい。
それでは今回はこの辺で、ではまた〜




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