キリ番SS『舞って落ち行く先に…』





カランカラン…

「おじゃまぁ〜」

年末のミッシュエベーゼンに来客を知らせるベルが響く。入ってきたのは金のメッシュを入れたバーシアである。
それを皮切りに彼女の同僚ブルーフェザーの面々次々と入ってきた。

「おじゃまします」
「ドモ〜」
「こんにちは〜」
「こんばんはですぅ」

それぞれに思い思いの挨拶をしながら冬の重装備を解いていく。店の中までコートやマフラーを着ているやつはいまい?

「どーも、今日はすまないな、店貸しきりにしてもらっちゃって。」
「いいんだよ、去年はアンタ達に色々と世話になったしね。これくらい何ともないさ。」

最後に入ってきたブルーフェザーのリーダー、ルシードは店の女将さんジラに謝るとジラは笑って許してくれた。そして

「その代わり、今日はじゃんじゃん飲んで食べとくれよ。サービスをちゃんとしたげるからね。」

そう言って店の奥へといったん戻り、厨房から料理を次々を運んできた。

「そう言えばジラ、更紗はどうしたの?」

バーシアが疑問に思ってジラに訊ねた。更紗とはここの女将さんの養女だ。養女とは言ったが実際の親子のように絆は深い。
バーシアにそう訊ねられジラは陽気に答えた。

「あの子には買い物に行ってもらったよ。いい加減そろそろ一人で買い物に行けるようになって欲しいからねぇ。」

陽気そうに喋ってはいるが、どうも心配そである。口調と態度がチグハグだ。

「女将さんが一番心配してるんだね。」
「そりゃあそうよ。ジラと更紗は親子なんだからね。」
「って、バーシアっ、もうお酒飲んでるの!?」

バーシアを見るとすでにジョッキ一杯に入っていたであろうビールば半分近く無くなっている。
バーシアは『ぷっはぁ〜、うまいっ!!』などと親父臭いセリフを吐きながら続けた。

「あったり前でしょう?なんのための忘年会よ。飲まなきゃやってらんないわよ!!」
「おまえの場合いつも酒飲んだりタバコ吸ったりだろぉ〜がっ!!」

バーシアのセリフにルシードが突っ込む。こうして始まったばかりの忘年会はいきなりのハイテンション具合で進んでいった。


………暫くしてルシードはジラに呼び出された。料理を持っていくためだろうと予想していたが実際は違った。

「ルシード、更紗を迎えに行ってあげてくれないか?」

それを聞いたルシードはジラに聴き返した。

「それはいいがアンタが行かなくていいのか?」

それを聞いたジラは顔を紅くしながらポリポリと頬を掻きながらルシードに言った。

「本当はあたしが行きたい所なんだけどねぇ。なにせ‘一人で買い物に行け’なんて言っておきながら迎えに行ってたら示しがつかないだろ?アンタだったら更紗も心を開いてるからあんたに頼みたいんだよ。」
「…ちっ、しゃーねえな、分かったよ。」

‘しゃーねえ’などと言っているが実際のの所、ルシードも更紗の事は気になっていた。都合が言いといえば良かったのかもしれない。
そして、相変わらず騒いでいたメンバーのドサクサにまぎれて店を出た。
しかし、ルシードは知らない。ゼファーがそれを見て目を光らせていた事に……。


………その頃、お使いに出た更紗は空を眺めて泣いていた。
店に帰る途中、雪が降って来て、初めは物珍しそうに見ていたのだが、そのうち涙を流し泣いてまった。

先ほど店を出たルシードは更紗を見て思わず見とれてしまった。
儚く振り続ける雪の中に立つその少女があまりにも儚く綺麗だったから…。
今にも雪と一緒に消えてしまいそうな少女の名をルシードは叫んだ。

「更紗っ!!」

名前を呼ばれルシードの方を向いた更紗が泣いているのを見てルシードは、ビックリして足早に駆け寄った。

「どうした更紗っ!!何かあったか!?」

更紗は首を横に振った。

「じゃあなんで泣いてるんだっ!?」
「(ビクッ)……」
「………すまない…。」

ルシードには原因が分からずつい強い口調で聞いてしまった事に激しく後悔を覚え、改めて聴き直した。

「何かあったのか?更紗。」
「雪…何処へ行くんだろうね…?」
「ハァ?」

いきなりの質問に思わずルシードは疑念の声を出してしまった。更紗はポツリポツリと続ける。

「雪…見てたの…。コンクリートに落ちた雪達を…そしたら雪は消える事もなくただ風に吹かれて舞ってた。雪…何処に行くんだろう…」

たどたどしく、しかし一生懸命に喋る更紗の話しを聞いて、ルシードは道路の方を見た。
確かに道に落ちたはずの雪達は時々吹く風や、道を走る車のなびかせる風などによって再び空を舞っていた。
そしてまた道路に落ちては風に舞ってを繰り返していた。

ルシードはそこでなんとなく分かった気がした。更紗は重ねたのだ。この行く当てもなく舞っている雪と自分を…。
まだ癒えていない傷を再び見たような気のしたルシードは更紗を自分の方へと引き寄せた。

「!!!?」

思わず更紗はビックリしてしまった。しかし、ルシードの顔を見るとルシードは顔を真っ赤にしている。
どうやら自分のした事が恥ずかしかったらしい。それを見て更紗は改めてルシードの温もりを感じる。……ジラとは違う暖かさだった。
暫くすると、ルシードは更紗を抱き寄せたまま話し始めた。

「確かに、一見すると何処にいくか分からない雪かもしれないな。でもな更紗、雪達は探しているんだと思うぞ。」

今度は更紗が疑問を感じてしまった。
自分の抱き寄せた先で顔の回りに‘?’をつけている更紗を見ながらルシードは苦笑ながら話しを続ける。

「今は只舞っているだけかもしれないけど、やがて雪は溶ける。コンクリートに落ちた雪は土の匂いも分からないまま…だけど、……ああ〜なんていったら言いかわからねぇ!!」

ルシードも口ベタな方である。そんな彼もまた思っていることを懸命に更紗に伝えようとしてあれやこれやと考えてた。
更紗は良く分からずにルシードに視線を注いでいた。まじまじと見られてルシードは更に混乱した。

「だからだな、アレだアレ!雪だって溶けて排水溝に入って海に行ったり、蒸発して空に戻って行ったり俺等の飲み水になったり自分達でやりたい事を探してるんじゃ無いか?と俺は思う訳だっ!!」

なんとなく分かったが更紗にはまだ要点が見えなかった。そして、思わず聴いた。

「つまり…?」
「つ…つまりだな…、おまえも自分で選べばいい。自分がどうしたいか考えればいい。それに……」
「それに?」
「あの…なんだ……俺だっているわけだし…」
「へっ?」

更紗は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。まさかルシードの口からこんなセリフが聴けるとは思わなかったからだ。
行ったルシードの方は更紗の‘へ?’と言うセリフを聴いて直ちにセリフを訂正する。元に戻りかけた顔は再び真っ赤になっていた。

「イヤ、‘俺’じゃなかった。‘俺達’だ。俺達だって居る。だから更紗、おまえには帰る所もあるし思ってる人間もいるだから…ってああっ!!何が言いたいのか自分でもわかんなくなってきたっ!!」
「分かるよ。」
「えっ?」
「ルシードの言いたいこと、分かる…だから……」
「だから?」
「これからも一緒にいてね。一緒に考えて、迷って、選んで、探してね。」
「お、おう。…それじゃあそろそろ帰るか。女将さんも心配してるだろうし。」
「うん」

そう言って店に向かって歩き出した、二人の手はさり気なく繋がれていた。


…………そしてそんな二人をさり気なく見守る(?)影が5つ。

「ちっ、ルシードのやつ、あんだけバッチリ雰囲気もってったんだからキスの一つや二つくらいやりやがれってのよねっ!」
「バーシア、ルシードにそんな事する度胸があると思うか?」

ゼファーにそう訊ねられたバーシアは暫く考えて一言「無理ね」と言った。
それを聴いていたフローネはバーシア達に呆れながらハハハ…と乾いた笑いをしながら言った。

「センパイ…酷い言われようですね。」
「でも、実際ルシードも根性ねぇなぁ〜。キスくらいしちゃえばいいのに。」
「そう言うビセットはどうなのよ?」

ルーティに訊ねられビセットは聴き返した。

「何が?」
「実際あんな状況になったらキスするの?」
「あったり前だろ!そのための訓練も夜な夜こうやってなだなあ…」

そう言ってビセットは自分の体を抱きしめながら唇の先を尖がらせて‘チュー’をして見せる。
ルーティは呆れて物も言えず一言漏らした。

「サイテー…」
「そろそろ戻るとするか。」
「そうね、つけてた事がばれると後々メンド臭いし。」
「そうですね」
「じゃあさっさと帰ろう。」

ゼファーの戻る宣言を皮切りにバーシア、フローネルーティの順にそそくさとミッシュベーゼンヘと戻って行った。
後には残されたビセットが只一人、未だにチューのポーズをしていた。
暫くしてようやっとトリップから戻ってきたビセットは周りに誰も居ない事に気付き

「なんで置いて行くんだよょ〜〜〜〜〜!!」

と情けない声を出しながら4人の後を追って行った。


「あ、二人とも、おかえりなさい。」

フローネに迎え入れられ店に戻ったルシードと更紗はバーシア達が妙にニヤニヤしているのを見て不信な眼差しでバーシア達を見た。

「オイ。」
「なんですか、センパイ?」
「なんでおまえ等そんなに気持ち悪い面をしてるんだ?」
「‘気持ち悪い’って、ルシードそれ酷くない?」
「ビセットうるさいっなんでそんなお前らニヤニヤしてんだ!?」
「べーつにー。それよかどうだったのよ?更紗とのデートは?」

バーシアに聴かれルシードは「はぁ?」と言いながら言葉を続けた

「デートってなんだデートってのは?俺はただ更紗を迎えに行っただけで…」
「『…俺だっているわけだし…』だってかっこいい〜〜〜っ!!」

自分がいったセリフをバーシアに言われてルシードは顔を真っ赤にしながら怒鳴る。

「て、ってめえ覗いていやがったのか?」
「覗いてなんかいないわよ、見守ってただけ。み・ま・もっ・て・た・のっ、分かる?」
「同じ事じゃねぇーかっ!!」
「因みにゼファーもビセットもルーティもフローネも居たから安心してちょーだい。」
「お……お〜ま〜え〜ら〜〜〜〜〜っ!!」
「バーシア、そんな事を言って閉まったら折角デバガメた意味が無いではないか。」

ゼファーの言葉で完全に切れたルシードだったが、厨房の奥から料理を運んできたティセがモノの見事に料理をぶちまけ、その大半をルシードにぶっ掛けた事によって自体は更に収集のつかない方へと突っ走ったと言う……

そんな様子を見ながら更紗は……心からの満点の笑みを溢していた………




あとがき…

出来ました。ようやっとです。ナンカ中途半端でごめんなさい。
やっぱり私はシリアス物よりギャグを創っとる方が似合っとるようです。
だがしかし……更紗を書けて嬉しかったぞぉ〜〜〜。
もうちょっとこのプチ更紗ブームは続きそうですが、私の作品(?)で次に彼女が登場するのはいつの事でしょう?
と、言う訳で、ここまで読んでくださった皆様に心からの感謝を送りつつ、今回はこの辺で、ではまた〜




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