狂宴の果て…



夕飯時のサクラ亭。ここには色々な人間が足を運ぶ。
色々とは言ってもそのほとんどが仕事が終わった人たちの宴会であったり、食事であったりするわけだが…
まあなにはともあれこの時間、サクラ亭はかき入れ時であり、宴会やれ食事やれを摂る人間には至福の一時だった。

住み込みで働くジョーとショップの店員2号事ジョートもそんな至福の一時を味わいに来たうちの一人だった。
最近は珍しくもなくなったが今日、彼は一人だった。そんなわけだ彼は今………

「イッイェ〜〜〜〜〜〜イッ!!みんな、飲んでるぅ〜〜〜〜〜!!!?」

大いに酒をかっ食らっていた。

因みに本日の彼のお仕事→『土木現場の手伝い』これの日は大概ジョートは仕事先の連中と酒を酌み交わしていた。
ジョート曰く、『喧嘩よりもなによりも、お酒を飲めばみんな友達。これ酒場での鉄則。お解り?』なんだそうだ。

そんな時一人の女性が店に入ってきた。エンフィールド学園の教師『バーシア・デュセル』、その人だ。
彼女とライシアンの『橘由羅』、それに『ジョート』は大酒のみとして街中に知られている。これらの被害で酷い目にあった人間は数少なくない。
そして、酒を飲んでる時は仲良しでも、それ以外の時のバーシアとジョートの仲は………

「あら、ロリコンジョートじゃない?」

………最悪だった。
店に入ってくるなりジョートを見つけたバーシアは早速何時もの憎まれ口を叩き始めた。勿論そんな事を言われて黙っているジョートでもなかった。

「あ〜ら、そう言うあんたはおタバコの吸い過ぎで、肌年齢50才のバーさん…じゃなかった、バーシアさんじゃありませんか。」
「(ムカッ)言ってくれんじゃないのこのウドの大木っ!!」
「(ムカムカっ)あんだとこのタレ乳女!まな板のルーティにでもその無駄にでかい乳分けてやれよ」
「(ムカムカムカッ)なんですって、この年齢不詳のクソオヤジっ!」
「(ムカムカムカムカッ)ああ〜ん?言ってくれんじゃねぇか役立たず教師!」
「(ムカムカムカムカムカッ)オカマ野郎!!」
「(ムカムカムカムカムカムカッ)売れ残り物女っ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………

サクラ亭一体に物凄く険悪な空気が流れる。もはや衝突は避けられない。
そしてそれを察知していたサクラ亭の客達は、『ヤバイッ!バーシア&ジョートのバトルが始まるぞ!!』と言って大慌てで自分たちの分の食べ物、飲み物を確保しテーブル等を片付け物が壊れないようにして二人を見守った。そしてとうとう…

「死んじゃえロリコン男〜っ!!!」
「てめぇが死にやがれ売れ残りっ!!」

壮絶(低俗)なバトルが始まった。パティはと言うと『店の中で暴れないでよっ!』と叫んでいたが今の二人にはそんな事は聞こえていなかった。
何時ものパティの嘆きを聞いた店に居たオヤジは『パティちゃん無駄だって、どうせ何時もの事なんだから』と笑顔で言う。無責任なものだ。
暫くするとどうやら2人ともバテたらしく息を切らしてしまった。

「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ……どーしたよバーシア?やっぱりヤニの吸い過ぎで体力ねぇんじゃねぇのか?」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……るっさいわね、もともと体力のない根性なし男よりましよ。」
「あんだと。」
「なによ?」

よもやバトルは第2ラウンドを向かえるかと思われたがそうはならなかった。

「「疲れた…」」

ボテッ……

そう言って2人は倒れてしまった。どうやら精も根も尽き果てたらしい。
『ドヨドヨドヨドヨ…』そうして二人が倒れると店内はザワメキ始めた。

『おいっ、2人とも倒れちまったぞ?』『ダブルKOって事は賭けは無効か?』『イヤ、誰か賭けてるかもしれんぞ?』『って言うかなんでジョートが勝たねぇんだよっ!!?』『馬鹿っ、あのジョートが良くバーシア相手にダブルKOに持ちこんだよ』『チクショ〜ッ、バーシアに賭けてたんだぞっ!!』

会話の内容からして、どうやら二人のどちらが勝つか賭けが行われていたらしい…。流石に転んでもただでは起きない方々である。
結局誰も『相打ち』には賭けていなかった為、賭けは無効となった。


数時間後。
サクラ亭は先ほどの騒動がなかったかのように何時ものにぎやかさを取り戻していた。サクラ亭に一人の少女が入ってきた。

「ジョート居る?」

狐の耳と尻尾を生やしたライシアンと呼ばれる一族の子。名を『更紗』と言う。どうやら帰りの遅くなったジョートを迎えに来たらしい。
因みにこの更紗とジョート、現在恋人同士だったりする。

パティは更紗を見つけるとクイッと店の端の方を指差す。パティの指差した方向を見てみると……居た。ジョートだ。
隣にはバーシアも居る。二人揃って寝ている…と言うよりは気を失っていると言う感じだ。この状態を見て更紗は『また何時ものが起きたの?』とパティに訊ねた。

「当り、良くもまあ毎回あんだけ騒げるもんよね。こっちはいい迷惑よ。」
「ごめんなさい。」

シュンとなって謝る更紗をパティは必死になだめる。

「やーねぇっ、迷惑かけてるのはジョートであって、更紗じゃないんだからそんな更紗が謝らなくても…」
「そーだよ更紗。更紗がわざわざパティちゃんなんかに謝る必要はないよ。」
「…………………………」
「…………………………」

パティのセリフを続けた人物の続きを2人は見て、セリフを失った。しばしの沈黙、後、騒音。

「あんた何時起きたのよっ!って言うか、なぁんで関係のない更紗が謝って、あんたは謝まんないかなぁ!!?あれから色々と片付けんの大変だったのよ!!おまけにアンタ重いし!!!」
「そんなにいっぺんに物言われても…ねぇ?更紗。」
「ジョート、大丈夫?」
「何が?」

更紗の心配をジョートが軽く聞き返した。パティの喚きを無視して、2人はいきなり2人の世界に入ってしまった。

「ちょっと顔が青いよ。」
「ん、ちょっと疲れたかも。」
「早く帰って寝よう?明日も仕事あるでしょ。」
「ま、ね。…はあ、しゃあない、今日のところは引き上げるか。パティ、」
「なによっ!」

二人の様子を見て顔を赤くしていた背を向けていたパティだったが、ジョートに呼ばれて振りかえった。

「バーシアに言っといて。‘今度の週末に『アレ』で決着つけよう’って」
「アレって…アンタまたアレやんの?」
「楽しいからねい。」

あっけらかんと笑顔で言うジョートを見てパティは観念したように溜息をついてジョートに言った。

「わかったわよ。ただし、ちゃんとお金は払ってもらうからね。」
「それは負けたやつに言って頂戴。じゃね。」

それだけ言うとジョートはウインクをして更紗と一緒にさくら亭を出ていってしまった。
ジョートの居なくなった事になど誰も気付かないくらい相変わらず店は賑わっていた。またアレをやるのね…そう思いながらパティはまた溜息をつく。
どうやら今週末は騒がしくなりそうだ。

『パティちゃ〜んタラの芽頂戴』
「はいは〜い」

店の客からの注文でパティは取敢えず週末の事は忘れて仕事をこなす事にした。

店の端ではノビていたはずのバーシアが、どうやらジョートの帰り際のセリフを聞いていたらしくニンマリしながら『楽しくなりそうね』と不適な笑みを零した。
週末。サクラ亭に嵐が起こる?




あとがき

長くなりそうなんで続けます。
大会の事には一切触れてないってこれどうよ?




SS置き場

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送