狂宴の果て



バーシアとジョートが小競り合いをし、店に居た客達が賭けをするもノーカウントとなった次の日の昼過ぎ、サクラ亭はいつも通りの夕飯の仕込み前のしばしの休息時間に、パティはリサを相手にお喋りをしていた。

「それじゃあまたジョートのボオヤは、ここで『アレ』を開くのかい?」
「そうなのよ。おかげで、ただでさえ忙しいのに参加者の受付までココでしなくちゃいけないから、昼時はジョートと更紗がバイトしに来る始末よ。」
「いいじゃないの、別にここが損する訳でもないし……ちゃんと毎回金は払ってるんだろ、負けた連中は。」
「それはそうだけど、他のお客さんも居るのよ?」

笑顔で喋るリサのセリフにパティが溜息交じりで答えた。

「まあその辺は運を天に任せるしかないさ。大丈夫だよ、いざとなったらアタシも手伝ってあげるから。それから…」
「何?」

何か在るのだろうかと思い聴き返すパティに、リサはフフフ、と不敵な笑みを溢しながら言った。

「アタシも参加するから。」
「リサも参加するの?」
「わるいかい?」
「別に構いはしないけど…店だけは壊さないでよね。」
「誰に物言ってるんだい?」
「…それもそうね。」

『お詫びに今夜はピザをご馳走するわ』パティはそう付け足して、厨房に夕方の混雑前の仕込みをしに戻っていった。
そんなのどかな時間が流れる午後、決戦の時は近い。


そして週末のサクラ亭……
ジョートがバーシアに決着をつけようといった『アレ』が今日、開催される………

『第8回エンフィールド飲み比べ大会』………

くだらない…くだらな過ぎる……(パティ&珠呂 談)

ルールはひたすら飲み続け、飲み比べる。ただそれだけ。潰れた者は脱落、残った者が勝者となる。
そして、順位の下から半分が金を持ち、上位半分は金を一切払わなくて良いと言う、勝てば官軍、負ければ地獄なペナルティー付き。
そんなギャンブル性も手伝ってか、この『飲み比べ大会』実は一部の人間の間にビミョーな人気を博していた……


いつ創られたのかも解からない特設ステージが、この催し用に特別に創られた。創ったのは何故かジョート。
こう言う事にだけは無駄に体力を使いたがる。それにしても、いつ創ったのかが疑問である。
本人曰く、『サービスタイムを使って創った。』んだそうだ。訳が解からん(爆)。


話を戻そう。そんな特設ステージの上に一人の男が立っていた。全体が薄暗いサクラ亭。急にスポットがその男に照らされた。
おかしな仮面を被ったその男はライトスポットが照らされると声高々に言った。

『レイディース エ〜ンド ジェントルメン、プリ〜ズ ウェルカ〜ム、飲み比べたいかぁ〜いっ!!』

辺り一面から『うぉ〜〜〜!!』と言うむさくるしい野郎どもの歓喜の声が響き渡った。
この大会、女性参加者は居るには居るが、少ない。はっきり言って由良とバーシア、それにリサの三人のみである。
他は全部男。そんな訳で観衆の声はほぼ全部男だったりする。
そんな中『何で私がこんな事しなくちゃならないんで御座いますか?』とでも言いたいような表情で、仮面の男ことハメットヴァオリーは司会を続けた。

「私に記憶が確かなら…」
「『記憶』?おまえの場合『気が確かなら』の間違いじゃないのか?」
「し、失礼な事をおっしゃらないで下さいっ!!大体、何故私の気が確かならなんて言わなくてはならないんですか!!」

ハメットのセリフを遮ったのは他でもないジョートだった。ジョートはハメットのセリフを聞くと、ほくそえみながら

「だって…なぁ?そんなヘンテコリンな仮面被ってボランティア活動なんてしてりゃあ、誰だって気が触れたんじゃないかって思うわな。」
「私だって好きでこんな事をしてるわけじゃ御座いません!!大体誰ですか!?私にこんな事やらせようとか考えた輩は!!?」
「ワリッ、俺だわ。」

ズルッ、とハメットがずっこけた。客は客達でそれを見て笑っている。
『笑い事じゃ御座いません…』と拗ねるハメットに『さっさと司会進めろよぉ〜』とジョートは他人事の様に言った。
『アナタが脱線させたんでしょっ!!』ともはや涙を流すしかないハメットはオヨヨオヨヨと話を元に戻した。

「ええ…話しを元に戻しまして、私の記憶が確かなら…この街の酒豪は橘由羅、バーシア・デュセルの二人に牛耳られておりました。がしかし、今回これに対して1人の男が立ちあがった。その名は……」

と勿体つけてハメットは間を空けた。そしてハメットは‘ビシッ’と指差し『この男だっ!!』とピンスポットを当てた。

「ジョートショップ店員ジョートォ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「っしゃあコノヤロ―――ッ!」

ジョートが遼腕を上げて雄叫ぶと『うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!』と言う声がサクラ亭に響き渡り『ジョオトッ!、ジョオトッ!、ジョオトッ!』と言うジョートコールがかかった。ハメットは続けた。

「そしてもう1人、まるでジョートが立ち上げる事に呼応する様にこの男も立ちあがった。その名も…シーヴスギルドの長、トラビ――――スッ!!」
「ウオォ――――――ッ!!」

先ほどと同じように『ウオ〜〜〜〜〜〜〜!!』と言う声が響き渡り『トッラッヴィスッ!』というトラヴィスコールが沸き上がった。

「そして、更にこれらに呼応する様に他の連中も参加を表明。これにより第8回(過去七回は気まぐれにテキトーに行われた)が行われるわけであります!!それでは皆々様早速ゲームを始めようと思います。」

そこまで言うと参加者の前にジョッキが置かれ早速ビールが並々と注がれた。
全員のジョッキにビールが注がれるとハメットの『レディ……ゴーッ!』というスタートの声と共にいっせいに飲み干し始めた。
次々と飲み干されるジョッキの中身、『ぷっはぁ〜……ウマイッ!』何ぞという声が聞こえてくる。
最後にのみ終わったヤツには新たにビールが注がれ罰ゲームとしてもう一杯飲ませられた。

由羅辺りは余裕をぶっこいて、わざと最後にのみ終わりもう一杯飲んでいたりした。そんな感じで大会はかぁ〜なりのハイペースで進んでいった。
途中、トイレに行って吐くものや、顔を洗いに行く者は居たが、この時点で未だ脱落者は居なかった。
しかし、飲み物はビールから日本酒へと移ると、流石に脱落者が出始めた。

バタッ…
『おお〜い1人潰れたぞぉ〜』と言う声が聞こえて来るとその場にいた参加者が‘う〜りゃ〜’と動き出し潰れた人間を店の床に転がした。
こう言う時だけ何故かチームワークが良い。マグロ(潰れた人の事)の処理も手慣れたものである。


徐々に人が減っていき、等々半分以下になるとついに堰がキレた。

「お〜い、よーやっと半分減ったぞぉ〜!」

まだ潰れていなかったジョートが店の連中に教えると、何処から現れたかさっきまで店に居なかった―――つまりは大会に参加していなかった連中―――連中がウジャウジャと現れて一斉にパティに注文を始めた。
そう、何を隠そうこの大会で負けられないのは半分以上の人間が潰れた後が怖いからだった。大会に関係のない人間が入ってきて一斉に集り始める。
勿論潰れていた連中はこのことを知らずに、次に目覚めた時負けた罰として酒題(集り飯を食った人の分込み)を払う羽目になる訳である。
表面上の建前として、結局決着はつかなかったからまた今度…と言うなんとも惨たらしいウソを付き、次回もまた参加させようとする。
下手な詐欺商法よりも性質が悪かった。


そんなわけで、ここからが本当の宴タイムの始まりだったりする。もはや『大会なんぞ関係ねぇ〜!』と言わんばかりの生き残り参加者&集り組み。
それまでも大会とは名ばかりの飲み比べ大会だったが、ここまで来ると最早何がなんだかわからなくなってくる。
ある者はテンション高々に唄い始め、またある者はマックスゲージを振りきり服を脱ぎ、唄い出した。


「あんた、首謀者のクセにこんなとこ居ていいの?」

暫くしてジョートが店の中から消えた事に気が付いたバーシアはフと見せの外に出た。
サクラ亭の外にあるサクラの下でジョートがボケーッとしている所にバーシアが声をかけた。
ジョートは少々顔を青くしていて、どうやら気分が優れないらしい事にバーシアは気が付いた。

「気にすんなよ。あんだけの馬鹿騒ぎだ、人が1人2人店からポッと消えたくらいじゃ皆気が付かんさ。」
「ま、それもそうね。隣いい?」

言いながらバーシアは煙草に火をつけて煙を吐き出した。

「ダメ」

きっぱりと言い放ったジョートにバーシアは『なんでよ?』と当然のように聴き返したが、敵も去るもの、ジョートはきっぱりと

「俺の隣は更紗の特等席だから。」

などと恥ずかしげも無く言ってきた。

「あ〜ハイハイそーですか。まったく更紗の欠片も無い。」
「こんにゃろめ…『可愛げが無い』とストレートに言わない辺りがかなり腹立つ…ま、も少ししたら店ん中戻るんだから、テメェもさっさと戻りやがれ。」

「や〜よ。あたしは涼みたくてここに居るんだから、あんたの指図なんか受けないの。」

‘シッシッ’と手を扇いでジェスチャーするジョートにバーシアはアッカンベーして言ってやった。
『あーそーですか』とジョートは言い放って店に戻っていった。
暫くするとテンションの上がったジョートが、周りに迷惑を撒き散らして馬鹿騒ぎをする声が聞こえてきた。
こうして『飲み比べ大会』改め、『週末の宴会』は夜をぶっ通して行われたのだった…


『第8回エンフィールド飲み比べ大会』は毎度の事として有耶無耶に幕を閉じた。
朝方、太陽が東の空から顔を覗かせるか覗かさないかと言う頃、あれだけ飲んで騒いで潰れなかった連中は『ああ〜楽しかった』などと言いながら帰っていった。
運悪く潰れた連中はパティにたたき起こされ、二日酔いや、懐具合に頭を抱えたり、吐いたりしながら勘定を払った。

ジョートはと言えば、金を払う事も頭を抱えることも無く、一足先にさっさと切り上げて帰った。
店に戻るとジョートは、今日は更紗とどんな事して遊ぼうか、珠呂にどんな嫌がらせをしてやろうか…そんな事を考えながら久しぶりに朝ご飯を作る事にした。

『そーだ、どーせ由羅のやつ昨日の今日で朝飯の事なんて考えてないだろうから、更紗に会いに行くついでに、更紗とメロディに朝飯でもおすそ分けしちゃろう。うん、我ながら言い考えだ。』
そんな事を考えながらジョートは普段の1.5倍のスピードで行動し、テーブルの上に書置きをしてさっさと作った料理を持って物凄いスピードで更紗の元へと向かって行った。
今日もエンフィールドは平和そのものらしい……




あとがき

大した事してませんね……すんません。こんなんしか書けませんでした。(切腹)
こう言うのをきっと美人局(つつもたせ)って言うんですね。嗚呼…バッシングが怖い。
じゃ、




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