『月世界』 そっと、唇に触れる。 触れた先から熱で空に飛んでいってしまいそうになる「ココロ」と「カラダ」。 地面に縛られない「ココロ」はきっと空たかくまで、どこまでもたかく飛んでいって、きっと大気圏も突き抜けて、きっとそのうち月にまで届くのでしょう。 「わふー……」 「いつもはヴェルカとストレルカを膝に乗せてるのに、今日は僕の膝の上なんだね」 「ハイ、リキの膝枕、気持ちいいです。お天気もとってもよくて、いっつふぃーるそーどっぐ! なのです」 「グッドじゃないの?」 「いえいえ、今日の私は気持ち犬さんなのです。ヴェルカとストレルカの気持ちがよく分かるのです。だから、「どっぐ」なのですっ、わふー」 「そっか」 しかたが無いなぁなどといいつつ頭をなでてくれるリキ。気持ちいいです。 「わふー……」 「少し、眠る?」 「もう少しだけ……このままで……」 居たいです、と言う言葉が続きません。リキの膝の上はとても心地よくて、もっとそうしていたいのに、お天気の良さと理樹の心地好さが私を眠りにさらっていきます。 「さーらーわーれーまーすー……すー……すー……ZZZ...」 ああ、もっともっと、リキの温もりを感じていたいのに……私の……バ……カ……。 フワフワと、6分の1の重力の上で踊る夢を見ました。リキと二人、手をつないで。『カラダ』は地球にあるのに、「ココロ」だけが月にいて、フワフワとした気持ちが、今も私をここで躍らせるのです。 「ココロ」が通うと、今度は「カラダ」を重ね合わせたくなって、重なった「カラダ」はそうして「ココロ」も重ねていく。そんな気がします。 もっとあなたと、リキと「ココロ」を通わせたい……だから、ねぇリキ? 今は夢の中で二人、月の上で踊りましょう? それで目が覚めたら、 『キスしてください』 おわり