満月衛星。-ss-真夏の結晶 満月衛星。 ss - 真夏の結晶

『真夏の結晶』

 誰もいない教室、というのはどこか世界から切り離されたような感覚になる。さっきからページの進まない本を読みながら彼は思った。
 冬の寒さを真っ直ぐに伝えているのに、窓から差し込む夕日は優しくあかくて、温かい気分にさせる。もうすぐ日が沈む。それまでの少しの時間に見せる空の、あかとあおのコントラスト。太陽に向かって伸びる雲は日に焼かれてあかく染まっている。
 きれいな空だと、彼は思った。
 空と雲、というのは見る人間によって変わるものらしいということを彼は最近知った。それは彼女がお年玉をはたいて買ったデジタルカメラを貸してもらった時のこと、何気なく移った空と雲を彼はきれいだと思い、写真に収めた。
「なに勝手に撮ってんのよ」
 不意にかけられた言葉に驚いてドアの方に振り返ると、そこにはむっすりと不機嫌そうな顔の持ち主こと彼女が。慌てて消そうとすると、彼女にデジカメを奪われてしまった。自分のデジカメを取り戻すと途端に機嫌の戻った彼女はいたずらをする子供のような目になって「さて、どんな写真を撮ったのかなぁ」と興味津々にデータを覗き始めた。
 自分の撮ったものが人に見られる恥ずかしさを存分に味わって彼は気がついた。なるほど、彼女は自分の羞恥心を味あわせたかったのだと。いまさら気づいても遅い、さて何を言われるのかと内心ドキドキしながら彼女の方に頭を上げて目を配ると、彼女はじっと彼の撮った写真を見つめて言った。
「これ……さっきの空だよね」
 彼女の問いに彼はうなずいた。そして後悔した。彼女が見せた表情がとても悔しそうで、自分のおもちゃを取り上げられたような悲しい表情だったから。配慮が足りなかったと自分を悔やむ。でも、あのときのあの空は何故か撮っておきたいと、彼は思った。あれは、初期衝動に似た感覚だった。
「空、こんなにきれいだったんだ。あたしにはくすんで見えたよ。写真、撮るの上手なんだね。」
「たまたまですよ。きっとこんな写真を撮れる方や、もっと上手く撮れる方は世の中にもっとたくさんいらっしゃいます。それに、あなたにはあなたの、ステキに撮れる写真があると思いますよ」
「そっか。……うん、そうだよね。それじゃああたしも、もっといろいろ撮ってみよっと」
 途端に彼女の顔がパッと明るくなった。季節にそぐわない真夏の結晶が笑ったようなそんな明るさで、彼は安心してそして微笑ましく思った。単純、と一言で片付けられてしまうかもしれないが、そんな彼女の素直さが彼はとても好きだった。
 今思えば、彼女のこの素直さや明るさに、これまで何度助けられたことだろう。きっと、これからも自分はこの彼女の表情一つ一つに助けられるのだろう。甘えてばかりもいられないことは解っていたがそれでもどうにもできないことが、世の中には山ほどある。わらにもすがれなくなった人間の末路は大概ネガティブなものだ。自分はまだ死にたくない、死ぬことを怖いと思えている。健全な証だ、と自分に言い聞かせて、そして彼女に救われて、彼は今日もここにいる。
 自分は一人で生きていけないことを重ねて感じて、結局ページは進まず内容も頭に入らなかった本を閉じた。そろそろ、彼女が来る。さっきまでの中途半端に暗い気分が、どこかに行ってしまったことに、彼は気付いていない。
 パタパタと廊下を駆ける音がして、そんなに慌てなくてもいいのに、と苦笑しながら、彼女の帰りを心待ちにしていた自分の心にも気付いて、彼はもう一度苦笑を漏らした。
「おまたせー、部活おわったよ。」
「おつかれさまでした」
 ガラガラと扉を開けて入ってきた彼女にねぎらいの言葉をかけると、彼女がニッカリと笑って答えた。
「疲れてないよん」
「それなら、ご苦労様でした、ですか?」
「苦労もしてませーん」
 まるで問答をしているような気分になる。それともこれは単に屁理屈をこねて自分を困らせようとしているだけなのでは? と思い彼女の方を見ると、期待の眼差しを向けている。
 前者だった。彼女にはかけて欲しい言葉が有る、自分はそれを探し出して彼女に答える。それが教室を出るための鍵らしい。
 こういう時かけるねぎらいの言葉というのは他にあっただろうかと考えてみたが、見当たらなかった。ならば他にどんな言葉があるだろう、お帰りなさいだろうか、なんとなく違う気もしたが、それ以外に言葉が見当たらない。まぁダメで元々、兎にも角にも言ってみることだ。
「お帰りなさい、ですか?」
「うしろ三文字が余計でーす」
 どうやらニアピンだったらしい。ここは教室で、家ではないから、その言葉をかけるのもどうかと思ったが、彼女にしてみればそこは問題ではないのだろう。疲れてもいなければ苦労もしていないというのだから、そこは彼女の気持ちを汲むことにする。
「お帰りなさい」
「ハイ、ただいま」と今度は優しい微笑を彼に向ける彼女。「それじゃあ、帰ろっか」
 そうですね。と返事をして、彼はカバンを担いで教室を後にした。教室は、完全に世界から隔離された。


 あの時から、季節が一つ、二つと過ぎていった。
 あの時に比べて日が暮れるのが早くなった町の街灯の下を、少年と少女は歩く。通いなれた道二人とも学生らしく手袋にブレザーの上からコートとマフラーを着込んで防寒対策をとっている。
 駆け抜けていく北風が耳に痛くて、街灯が照らす道で彼はコートを巻き込んで身を震わせた。ひとしきり身を震わせ終わると、元通りに背筋を伸ばす。そのまま体を縮めこませるようなことは、しない。
 身を小さくしてしまうと体の血液の巡りが悪くなってかえって寒くなるような気がして、彼はそうすることを嫌った。背筋を伸ばしていると体中にちゃんと血が巡り、心臓から新鮮な熱と血が通っていくような気がする。あくまで自分がそう思っているだけなので、他の人間には言わないが。
 隣を見れば、白い息をはぁーとはいて手を温めつつ、寒い〜っとかいいながら彼女が身を縮み込ませている。彼の考えなんてお構い無しだ。それを彼女に伝えたところで「だって、寒いもんは寒いんだもん、しょうがないじゃないっ」とか言いそうだ。彼は思わず苦笑を漏らした。
 漏れた苦笑が彼女の耳に届いたのだろう。なによ? と怪訝な瞳で彼をにらみつけた彼女を見て彼は思った。
「色、だいぶ落ちましたね」
「ん?」
 目があった彼女は、なんのことを言われているのか分からなかったのだろう。しかし彼が自分の頬を指しているのを見て、なにを言われているのか理解したようだ。
「ああ、肌ね。冬だもん。そりゃ落ちるわよ。水泳部は冬はオフシーズンなんだから」
「そして代わりに髪は黒く戻りつつある、と」
 彼が指摘すると、根元が黒い髪の毛先をいじりながら、今度トリートメントしてもらってこよ、と呟いた。
 でも彼は彼女の艶のある黒い髪も好きだったけど、塩素で脱色された少しパサつき気味の髪の毛も好きだったから、勿体無いと素直に思う。
 今日が見納めらしいので、彼女に気取られないように、髪を眺めた。活発な彼女によく似合う髪だと、彼は思った。
 そんな彼の心を見透かしたように彼女は言った。思わずドキッとする。
「プールに入れないんだもん。落ちるもんだって落ちないわよ。」
「この季節はもっぱら室内で筋力トレーニングですか?」
「今の季節に表でやったら凍え死んじゃうわよ。ホント、表でやらないだけマシよね。今腕相撲したらきみに勝つ自信あるわよ」
「読書のムシに勝てない水泳部員では、来年はありませんね」
「きみぃ。ちょっとは否定しようよ」
「仮に否定して、勝負にでもなったら負けることは請け合いですからね。それこそ恥の上塗りですよ。そんなわけで丁重に遠慮します」
 むんっ、と彼女は腕に力を入れて力こぶをつくる。全身運動をするスポーツ特有のバランスの取れた筋肉。自分のほっそりとした腕とは大違いだ。
 勝負以前の問題だと悟り、両手を挙げて降参のポーズをとる。彼女の方はつまらない、とあからさまに不機嫌になって頬を膨らませた。
「むぅ、なんと勝負の売り甲斐のない……」
「そういうことは他の部員としてください。ああ、次の学年末のテストだったら勝負は買いますよ」
「うわうわっ。それはこっちからお断りしますっ。っていうかさ、今度また勉強教えて、ね?」
「かまいませんよ」
「助かりますだぁ、大名人様ぁ〜っ。……あぁ、学年末で思い出しちゃったよ。来年受験なんだよね、あたしたち」
「そうですね」
「うわっ、なにその余裕そうな表情っ。くぅーっ、優等生の余裕ってヤツですかっ」
 心底悔しそうに胸元で作った握りこぶしに力を籠める彼女に苦笑して答える。
「違いますよ。ボクの場合、受験ではなくて就職を希望してますので、そっちの心配が要らない、と言うだけの話です」
「えっ……大学、いかないの?」
「行きますよ。今、ではありませんが」
「どういうこと、わけが分からないよ」
 混乱気味の彼女にわかりやすく噛み砕いて説明する。
「簡単ですよ。一回就職して、それから必要だと思ったら、それにあった大学を見つけて、そこへ行くんです」
「そんなメンドクサイことしないでさ、さっさと大学行って就職すればいいのに」
「そうしたいのは山々なんですが、うちは事情が事情なので行くとしても最低一年は浪人して、その間にお金を溜めて、それから夜間というコースを取らないといけませんね」
「あっ……そっか、それじゃあ、仕方ないよね……」
「年賀状、出せなくてすいませんでした」
「ううんっ、ううんっ」申し訳なさそうに謝る彼に両手で手を振って、肩を落とした。「……お父さん死んじゃったんだもん。仕方ないよ」
「あたしの方こそ、バカなこと言っちゃって、ゴメン」
「気にしないでください。勝手に死ぬ方が悪いんですから」
 ありったけの皮肉と、答えの帰ってくることのないなぜたちを籠めて言葉を吐き出す。そして思い出す、あの日のことを。
 あの日は、今よりも日が沈むのがずっと遅くて、彼女の部活が終わるのもそれに合わせて遅かった。もっとも、そのころの彼は彼女のことをまだ知らなくて、彼の生活はいたって平凡だった。元々部活には入っていなかったから学校が終わると塾へ行ったりバイトをして、過ごすという、いたって普通な学校生活。だが、それは突如として一変した。


 その日は塾もバイトもない久々の休日のことだった。友達と連れ立って遊びにいき、一日遊び倒して帰宅した。ただいまと言って家に入ると、家の中は静かだった。普段だとこの時間は母親が夕飯の支度をしているはずだから、パート仲間と呑みに行ったのだろうか。そういう時はいつも夕飯にはカレーが作られているはずだったからまぁ心配はないだろうと思い、リビングに入り、そに在る者を見て、彼は固まった。
 父親が首を吊っていた。
 ベランダのある窓から入る西日に照らされて、真っ赤に燃えたような四肢はだらんと伸びていて、床には水溜りができていた。首を吊ると失禁するらしいと、後で知った。何をどうしていいか分からなくて、思考がまとまらず声を出すことも、動くことすらも出来なくて、彼はその場に立ち尽くした。気がつくと彼は病院にいて、そばで母親が自分のことを抱きしめながら泣いていた。これで自分は泣けなくなった。母を支えなければ、とぼんやりとした頭でぼんやりと考えてそれからどうしなければならないのだろうかと考え始めた。父の死はとりあえず横に置くことで、彼は崩れることを免れた。
 気がつくとあっという間に全てが片付いていた。通夜も、葬式も、火葬も、全てが全て。親戚がいてくれたことが家族には幸いした。葬式の手続きや喪主は親戚一同が引き受けてくれて、そのとき彼は人の温かさをありがたいと思った。けど、そこまでだった。全てが片付くと、当然のように彼らは元の生活に戻っていった。後には母と子だけが、残された。49日が終わるころには母親も何とか現実を見られるようになり、生きていくためにはお金を稼がなければならないと考え始め、パートに復帰した。彼も塾を止め、バイトのシフトを増やして家計を助けた。そのころだった、彼女を知ったのは。


 後で見つかった遺書には二言だけ。『すまない』と『頑張れ』。この二言だけだった。
「すまないって何がですか。何を頑張れば良いのか分からないですよ、これでは」
 それだけ呟いく。涙は一つも出てこなくて変わりに乾いた笑いが漏れた。
 なぜ、勝手に死んだのか。なぜ、自分たち家族に一言も相談しなかったのか。なぜ、自分だけ楽になろうと思ったのか。なぜ、残された自分たちのことを考えなかったのか。なぜ、自分たちはそのことについて何も気付いてやれなかったのか。なぜ、もっと父親のことを解ろうとしなかったのか。
「私たちの存在っていったいなんだったんですか」
 続く言葉が出なかった。家族ではなかったのですか、その言葉が続かなかった。
 どろどろと、ねばついた感情が彼の中に渦巻く。それはひどくゆっくりで、でも確実にその中心になる穴に向かって彼を引き摺り込んでいく。だけどその中に身を投げ込んでしまえば楽になれるという、暗く甘い毒で彼の感覚をしびれさせる。いっそ本当に流れに身を任せてしまいたい、そんな思いにかられた。
「コラッ」
 パンッ、という音がして、彼は自分がたたかれたことを知った。
 たたかれた、というよりは手と手でサンドイッチされた、というのが正確で、それは今も続いていて、彼の顔は彼女の両手にビッタリと挟まれている。
「そんなこと、言わないの」
 そういって彼女が真っ直ぐな目で彼を見ていた。彼女の目に映った自分はまだ、大丈夫だと彼に向かってうなずいた。


 ヒソヒソ……ヒソヒソ……
 話し声が耳の奥でうるさかった学校に復帰した初日。周りのヒソヒソ声は父親の自殺の原因だろうということは自分を舐める視線を感じてすぐに分かった。
 数少ない父親が残したもの。いまだに分からない自殺の原因と少ない遺産。これで借金でも抱えていれば原因はすぐに分かっただろうに、とすでに遠い過去になった父親に悪態を一つつく。死んだ人間は何も言えない、考えられないのだから残されたものの精神的サンドバックになってもらってもバチは当たらないだろう。そんなことを考えていると、声をかけられた。
「この度はご愁傷様でした。家が近所にもかかわらずお手伝いもできませんで、申し訳ありませんでした」
 自分と距離をとり、見えない人の不幸という甘い蜜をすするクラスメイトをよそに、彼女だけが傍にまできて深々とお辞儀をした。
「お気遣い痛み入ります」
 なんと返していいのか分からなくて、そこで言葉が詰まった。それ以前に彼女が誰だか分からなかった。みたことがない顔だったのでクラスメイトではないことは分かる。ではなんだろうと考えて彼女の言葉の中から自分と接点があるらしき一言を思い出した。『家が近所』これだ。ということは同じアパートの住人だろう。誰だったかと思い出そうと記憶の中をめぐらせていると、彼女が口を開いた。
「これからは家も近所ですし、色々とお手伝いさせていただきますので、遠慮なく申し付けてくださいね?」
 それだけ言うと、彼女は自分の言うべきことは言い終わったときびすを返して、教室を出て行こうとした。なんとなく、これで終わらせてはいけないと、彼は思った。思ったときには口が勝手に開いていた。
「あ、あの!」
「なにか?」
 ピタリと止まって、彼女が振り返る。なんというべきか、言葉がみつからなくて、必死で考えて出た言葉が
「ありがとう」
 の一言だった。だが彼は知らない。そのときの彼はとても穏やかな顔をしていたということを。教室に入ってきたときは距離をとっていたクラスメイトたちが、そんな彼を見て、彼にお悔やみの言葉をかけてくれた。あっという間に人だかりができて、彼女は見えなくなった。それが始まりだった。
 それから、彼女と彼女の家族との交流が始まった。同情とか、哀れみとか、そういう感情を抜きにして、彼女たちはよくしてくれた。礼を言っても言い足りないくらいの感謝が、こころの中に積もる。それをお返しするように、自分たちもできる限りの礼をした。お礼といいつつ、本当はあの家族との交流を断ち切りたくなかっただけなのかもしれない。それでも良い、今はこのぬくもりを大事にしたいと思った。


 彼女は同じフレーズを、同じトーンで繰り返して言った。
「そんなこと、言わないの」
「すいません」
「何があったかは知らないけれど、勝手に死んじゃったのは確かに無責任かもしれないけれど、それでもきみを生んでくれたお父さんなんだよ、それまできみを大切に育ててくれたお父さんなんだよ。それなのに、そんなこというなんて……」
 言葉にならない声だけに重く、伝わってきた彼女の声。すいませんとしか言えなくて、それしか伝えられなくて彼はもう一度すいませんと呟いた。
 どれだけの時間が経ったのかがわからなくてあっという間だったような、ずいぶん長いことそうしていたようなあいまいな感覚にとらわれる。彼女は彼が落ち着いたことを確認すると「よしっ」とだけ微笑んで彼から手を離した。彼女が離れる瞬間、真夏のにおいがして彼はまた錯覚にとらわれる。
「うぅ〜、寒いっ。早くかえろっ。今夜はおでんがいいかなぁ、それともやっぱり鍋とか? フォンデュとかも楽しそうだよね。あ〜あ、やっぱり冬はあったかいもの食べないとね。……って、おんや?」
 そこまできてようやっと気がついたらしい。彼が先ほどの場所から一歩も動いていなかったことに。
「お〜い、早くかえろ。今日はシチューだぞーっ」
「さっきおでんとか鍋とかフォンデュとか言ってませんでしたか?」
「いーのっ。今決めたのっ。今日はシチュー。ジャガイモとブロッコリー沢山入れるの」
「ジャガイモはともかく、ブロッコリーの山盛りだけは勘弁してくださいね」
「あれ? ブロッコリーダメだったっけ?」
「あの味もしないのに口の中でパサパサした後に唾液を吸ってぐちゃぐちゃする食感が苦手なんです」
「大丈夫だよ。しっかりとシチューの中で煮込んで味がしみるから。そうしたらほら、おいしいものが食べられて、体もあったまって、苦手なものも克服できる。一石三鳥」
「ああそうでした。今日は母が早めに帰ってくるので久しぶりに外食しようってことになってて……」
「じゃあおば様もうち来て食べれば良いじゃん」
「あぅ、……ブロッコリーは本当に、勘弁してください。数少ない苦手な食べ物なんです。そもそもあれって食べ物なんですか?」
「立派な食べ物だよ。おいしいじゃん。ふーむ、勿体無い。それじゃあブロッコリーと一緒に違うものも入れて、君には特別、そっちの方を山盛り入れて差し上げよう」
「そうしていただけると助かります」
「それじゃあ八百屋さん行って食材かってこ」
 彼のほっとした表情に残念そうな顔をして、おいしいのに、ブロッコリー……と呟く。
 けれどすぐに気持ちを切り替えて「ま、いっか」と彼女は八百屋に向かって歩き始めた。冬の空に咲く夏の結晶のような笑顔を彼に向けて。


「八百屋は向こうです。そっちに行ったら普通に家についてしまいますよ」
「ありゃ」









おわり







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