満月衛星。-音 邦-平沢進 満月衛星。  音 邦 - 平沢進

音源  Virtual Rabbit  時空の水  救済の技法  賢者のプロペラ

Virtual Rabbit
  アルバム全体が一つの物語になっている。内容については何も言わない、教えてあげない。是非とも自身の目で確かめていただきたいから。

  すげぇ。なんていうか、すげぇ。それ以外には言い表せないし、言い様がないんだから仕方がない。
  だってもぉ〜、ジャケットの1ページ目を開いて、そこに書かれているイントロダクションを読んだ瞬間に、もぉ〜その作品に取り込まれたよ。
  本にでもなれば、楽しい作品になるのだろうなぁ〜とか思うけど、それはきっと野暮と言うヤツなんでしょう。
  折角媒体はCDであり、プレイヤーにかければ音楽が流れてくるのです。音楽を聴きながら、自分で想像するという贅沢があっても好いと思うわけです。

  聴いて自分で展開させる脳内絵本。100人いれば、100通りの物語が、100回聴けば、100通りの物語ができる。・・・かも。(笑)
  こういう完成度の高い、人の入る隙間がある音楽は、色々な人に聴いて欲しいと思う。

m1.嵐の海 m2.バンディリア旅行団 m3.我が心の鷲よ 月を奪うな(プラネット・イーグル) m4.ヴァーチュアル・ラビット m5. UNDOをどうぞ m6.山頂晴れて m7.静かな海 m8.死なない男 m9.太陽の木 m10.ロシアン・トビスコープ

時空の水
  時空の水は、まるであてどもなく流れる川のよう。
  マーチのようであったり、激流のようだったり、まるで時間が止まってしまったかのようにそこに存在するだけだったりと・・・刻一刻と形を変えて周りの風景すらも変容させてしまう。
  原生林のようなイメージや湿原、森林、果ては河口だったりと、曲ごとのイメージを押し付けることなく、自然と思い浮かばせてしまう。

  やっぱこの人すげぇなぁ〜・・・とか感心しちゃったりして。いやぁ〜でもこれがまたホントにどれも好い曲で。
  打ち込みを多用してるんだけど、どこかバンドサウンドっぽいものが漂ってるんだよね。まぁギターやドラムも中では使ってるっぽいから当然と言えば当然なんだけどさ。
  でもやっぱり、嗚呼〜、やっぱりこの人はバンド畑の人だなぁ〜なんて思っちゃうのですよ。なんとなく。

  これはきっと、時空の水が辿った旅を辿る、ドキュメンタリ映画のような物語を音楽にしているものなのだ。
  とか勝手に考えている昨今ですわ。
  そんなことを考える私は、『フローズン・ビーチ』が一番のお気に入り。
  真っ青でどこまでも優しく広がる海と空が、まるで自分も含めて全部いっしょくたになってしまうような、そんな感覚に襲わせてくれる。
  それはとても、心地の好い感覚。

m1.ハルディン・ホテル m2.魂のふる里 m3.コヨーテ m4.ソーラ・レイ m5.仕事場はタブー m6.デューン m7.フローズン・ビーチ m8.時空の水 m9.スケルトン・コースト公園 m10.金星

---救済の技法
  サウンドがオーケストラみたいに貴くて壮大なんだけど、クラシックの様な硬いものが無い。飽くまで柔軟、そして壮大。んでもって相変わらずの美しさ。この人のサウンドの美しさはまさしく唯一無二だね。
  タイトルは『救済の技法』だけど、私にはどちらかというと『物を創る人達が織り成す物語』ってイメージを受ける。一つ一つが積み重なってモノが形成されていくような感覚。

  物凄いビコビコビコビコ言う音がアップテンポに流れるかと思ったら、次にはゆったりとしたスローなサウンドでシンプルながらに広くて深いサウンドを聴かせてくれる。緩急自在な様は流石だよ……。
  まるで演劇に使われるサントラを聴くような気分になるね。一つ一つが物語で、それらの物語が繋がって、新しい、本当の物語が見えてくる。
  オーケストラのような音楽の厚みの中にアジアンテイスと漂ってる気がするのは決して気のせいじゃないと思うな。使ってる音にそういうのがあるって言うだけじゃなくて、メロディの創りこみ方とかなんだろうな……兎に角いろいろな所にそーゆーモノを感じる。

  庭師KING、GHOST BRIDGE、MOTHERと橋大工が特にお気に入り。庭師KINGとMOTHERは割りとアップテンポな曲。GHOST BRIDGEと橋大工はスローテンポ。でも4曲ともなんかいいのよ。
  アップテンポな曲には奮い立たされるし、スローな曲には物凄く心を落ちつかさせられる。一曲一曲に一喜一憂喜怒哀楽アップ・アンド・ダウンをしまくってます。

  基本的にいアルバムでとてもすきなのだけど、これといって言う事が無いんだよね、実は……
  なんなんだろな、感想どーこー言うよりこのアルバムがきっと雲みたいなアルバムだからなのではなかろうか。
  上空にたまった水蒸気が塵芥を核としてやがて雲として形成して行き、風に流され、雨を降らし雪を降らせる。そうして地上に降り立った水達がまた蒸発して……っていう自然の循環みたいなやつをこのアルバムは音楽でやっている。
  その間に起こる物語たちがまるで演劇のように、曲はサントラのように耳から、体から、心に響いていくんだろうねい。

m1.TOWN-0 PHASE-5 m2.MOON TIME m3.庭師KING m4.GHOST BRIDGE m5.ナーシサス次元から来た人 m6.万象の奇夜 m7.MOTHER m8.橋大工 m9.救済の技法 m10.WORLD CELL

---賢者のプロペラ
  これはもう一つの『千年女優のサウンドトラック』ですよ。千年女優で使われていた曲に歌詞がついてるついてる。んでもって『ロタティオン [LOTUS-2]』もばっちり収録されてるされてる。
  かなり元気よくぶっちゃけた話し、実はこのアルバム、『ロタティオン [LOTUS-2]』が入ってたから購入しました。って言うかね、千年女優が物凄く好きなんですよ。始めてこの映画を観て、エンディングテーマを聴いたとき、正直泣くかと思いました。それくらい感動して、以来この曲が大好きです。

  前々から平沢氏の存在は多少なりとも存じ上げていましたが、購入を決定したのはこのアルバムが初めてです。始めはこんな曲を創るのかぁ〜。
  などとボヘェ〜って感じで特に何を感じるでもなく聴いてたんですが、千年女優を何回も観て、このアルバムを何回も聴いているうちに曲が使い回されている事に気がついて、『おおぉ〜、曲に歌詞がついとる』と一人で素直に感動してましたよ。

  ……なんか違うものの感想になってきたな。話を戻そう。
  で、だ。収録曲に入っているのはどうやら錬金術に使われる用語のようで、アルバム自体もとっても錬金術チック。平沢氏本人が錬金術師のような人だけにこのアルバムはきっと本人に一番近いアルバムなんじゃなかろうか?
  音という素材を使ってそれらを化学反応させる。そこから生み出されるメロディを更に化学反応を起こさせる。そこから生まれるメロディにボーカルという魂が込められる。
  もぉ〜その音のなんとも言えないことなんともいえないこと。激しい曲は心から激しくて、落ち着いた曲はどこまでも広くて静か。

  積み上げられていく物語の主人公になるように心の底から入っていけるアルバム。感情輸入するよりは小説を読むような感覚に近いかな。
  賢者のプロペラという意味にどういう意味があるのかって長いこと考えてたんですけど、これって『メビウスの輪』のことを示しているんじゃなかろうか。ということに今しがた気づいたよ。
  メビウスの輪を廻し続ける賢者。表も裏も無い輪を廻す物語を賢者はつづり、我々はそれを読み続ける。読むたびに物語はきっと、新しい一面を見つけさせてくれるはず。

  好いアルバムだよ。

m1.賢者のプロペラ m2.ルベド [赤化] m3.ニグレド [黒化] m4.アルベド [白化] m5.円積法 m6.課題が見出される庭園 m7.達人の山 m8.作業 [愚者の薔薇園] m9.ロタティオン [LOTUS-1] m10.賢者のプロペラ

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